成都、西安、鄭州、杭州、武漢など、10月だけでも9都市で反日デモが発生し、同時に日本ブランドの不買運動にも火がついた。尖閣諸島問題を発端とする反日デモは中国全土で展開する日本ブランドにも大きな影響を落としている。その後を追った。
日本企業の悲鳴はまず税関から上がった。上海では通関で商品を止められるケースが今でも続いている。
「通常は輸入商品10ケース程度が抜き打ち検査の対象になるが、最近は40ケースに増えた」と慌てる日系食品企業もあれば、「輸入品の見積もり金額が安すぎると文句をつけられた」という部品メーカーもある。同メーカーは「付随資料も『翻訳が正しくない』とつき返された」と憤慨。余計な検査費用を取られ、時間が長引くとともに、倉庫保管料までも上乗せされるという、踏んだり蹴ったりの状況が続いている。
中国人同士での「いじめ」もある。日本食品の販売を行う中国人のA社長は「杭州の店舗では店員が泣かされました」と語る。同じフロアの他社の販売員が、自社の販売員に「日本製なんかボイコットしてやる」と言いがかりをつけてきたと言う。
相反する「外資への不安」と
「国産品への不信」
中国のネットでは不買の声が大きな高まりを見せている。
10月24日、陝西省宝鶏市で発生したデモは、反日スローガンの一方で、「官僚腐敗」や「住宅価格の高騰」に反対する声が上がったという。「反日」に名を借りた不満のはけ口の水面下には、若者が夢(住宅購入)を描けなくなった社会への不満がある。
不買の呼びかけは、10月16日に成都、西安、鄭州、杭州の4都市でデモが発生するだいぶ以前からくすぶっていたが、その一方で見逃せないのは、昨今の日本企業の対中投資を日本の侵略に重ねた「外資に国内経済を喰われる」という危機感である。
09年11月、北京交通大学産業安全研究センターが発表した「2009中国産業外資控制報告」は、過去10年で中国の工業に占める外資の割合は3分の1以上になったと指摘。現在、中国における外資系企業は60万社に上り、市場のみならず、資本、技術、そしてブランドまでが外資系企業の支配を受けていると解説する。28産業のうち21産業の上位5位は外資企業が占めるという報告もある。