ここ数年、国内メーカーの高級ウイスキーの終売や休売が相次いでいる。先日はキリンビールが2019年春をめどに主力ウイスキー『富士山麓 樽熟原酒50度』の販売を終えることを公表している。これらの原因は“ウイスキーの原酒不足”といわれるが、なぜこんな状況になってしまったのか。(清談社 鉾木雄哉)
大量生産できない
「モルトウイスキー」が終売に
国産ウイスキーの終売、休売が止まらない。ニッカウヰスキーは10年以上の年代物『余市』&『宮城峡』を2015年にすべて終売。サントリーも2014年に『山崎10年』と『白州10年』を終売し、今年5月には『響17年』と『白州12年』の販売休止を公表して話題を集めた。
サントリーが休売&終売の理由として公表しているように、原因はウイスキーの原酒不足だが、これは一体どういうことなのか。
まず知っておきたいのが、ウイスキーには大きく分けて、2つの種類があるということ。まず1つは、大麦麦芽のみを原料とする「モルトウイスキー」。そしてもう1つが、トウモロコシや小麦、ライ麦、未発芽の大麦などを主原料とした「グレーンウイスキー」だ。
この2種類は、原材料だけでなく蒸留方式も異なり、「グレーンウイスキー」は連続式蒸留器、「モルトウイスキー」は単式蒸留器で蒸留される。連続式蒸留器は短期間で一気にアルコールを濃縮するため、効率的で大量生産向き。単式蒸留器は、原料の風味が残りやすく個性的な味に仕上がるが、手間がかかるため大量生産には不向き。しかも、値段は高価になる傾向がある。休売&終売が相次いでいる「白州」や「余市」といったブランドは、すべてモルトウイスキーのため、そもそも大量に原酒を造れない。
ただ、ウイスキー文化研究所代表でウイスキー評論家の土屋守氏は「現在の原酒不足の一番の要因は、ウイスキーの低迷期間が長かったこと」と指摘する。