中小企業にとって「いい人材」はなかなか存在しない。ごくまれにいたとしても、経営の足を引っ張る存在になる危険もはらんでいる。また、大企業から人材をスカウトしても、期待外れになることが多い。だから社長は、人材に期待してはいけない。

「いい人材」が会社を壊すこともある

中小企業に
リーダーシップのある管理職はいらない

 中小企業の管理者である、課長や部長に当たる人材について考えてみましょう。彼らは、現場の責任を背負っており、会社を支える立場です。本来は社長の右腕となるべき存在です。しかし、なかなかこのような人材はいないものです。

 仮に、中小企業の経営に理解があり、リーダーシップも発揮できる、まさに理想的な「いい人材」にめぐりあえ、彼を迎えることになったとしましょう。そういう可能性も、まったくないわけではありません。

 ところが、このような人材は社長の能力を凌駕する場合があります。やっかいなことに、社長の力量がわかってしまうのです。すると、社長ですら、彼を使いこなすことができません。いわゆる、手に余る社員になってしまいます。

 ちょっと気に入らないことがあると、社長の方針にケチをつける。社員の前で、社長に向かって反対意見を堂々と主張して、いい気分になる。少し大きな仕事をすると、得々として自慢をする。できない社員は過酷に扱う。直行、直帰が多くなる。交際費は勝手に使う――だんだん身勝手がすぎてきますが、与えられた仕事では確かに成果を出しており、言うことも正論なので、社長も文句を言えなくなるのです。

 こうなると、会社の中は分断され、彼を中心にしたインフォーマルな組織ができ上がり、彼はますます幅を利かすようになります。

 さすがに、社長も危機感を覚えて、せっかく手に入れた人材なのに、断腸の思いで辞めてもらうしかなくなります。