>>(上)より続く

 息子は泣いて悔しがりスプラトゥーン熱を再燃させた。それからBさん宅にS+の子がちょくちょく遊びに来るようになり、Bさんは仕事が休みの日はその少年にプレイを見てもらうなどした。息子もグングンうまくなったが、途中で熱が冷めたらしくプレイが散発的になった。

年齢詐称でつかんだ絆
ただ頂を目指して

 当初「打倒息子」だったBさんの目標は更新され「目指せS+」となり、プレイを始めてから1年、一時は神の領域とまであがめたS+へと到達したのだった。息子は称賛の目でBさんを見た。

「無事父の威厳を取り戻せました(笑)」

 次なるBさんの目標は『S+カンスト』であった。ウデマエを示す数値が上がりに上がって測定不能なところまで振り切れるのを『カンスト』(カウンターストップの略)といい、このレベルになるともはや人外の“化け物”と言って差し支えないのだが、さらに半年後、Bさんはこの目標をも達成したのであった。すでに『スプラトゥーン』から離れて久しかった息子からは「ふーん。すごいね」と言われただけだった。

 化け物レベルにまで腕を磨いたBさんだったが、まだまだ上には上がいる。

 スプラトゥーンガチ勢の中では「カンストはスタート地点」と捉えるのが常識である。動画サイトにプレイ動画の投稿を始めるなどしていたBさんは、ただ純粋に、もっとうまくなりたかった。

 同ゲームでは非公式の大会がちらほらと開催されており、Bさんは腕試しでこれに出場したいと思った。しかし4人のチーム戦であるから、あと3人メンバーを見つける必要がある。Bさんはチームに所属することにした。仲間が強い方が自分も強くなれる。

 Twitter上を探すとガチのチームをいくつか見つけられたが、参加条件が厳しかった。カンストは前提として、「週に4回プライベートマッチに参加できる」「フェス百ケツ経験がある」などが条件として挙げられていて、これはつまりどういうことかというと「全てを『スプラトゥーン』にささげる覚悟があるか」を問われているのである。

 さすがに仕事も家庭もあるBさんにとっては厳しいが、唯一、Bさんが入れそうな募集条件のゆるい、カンスト限定のチームを見つけた。問題は「学生のみ」という条件である。