“世界一厄介な課題”と言われる「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」に挑む日本人起業家がいる。アストロスケール創業者兼CEO、岡田光信さんだ。2013年、資金も人脈も技術もない40歳が始めた「無謀な挑戦」は、たった6年で150億円を超える資金を調達して独自技術と世界初のビジネスモデルを構築し、さらに2020年の半ばにはスペースデブリ除去実証衛星の打上げも控えている。そんな“宇宙起業家”が自身の思考の原則を初めて明かした『愚直に、考え抜く。』から、反響の大きかったノウハウをご紹介する。今回は、効率化の秘訣として「全選択肢にあたる」という、一見矛盾した考え方をする深い理由を披露する。

「全選択肢にあたると効率がアップする」深い理由

全選択肢にあたることが、なぜ効率化につながるのか?

 全選択肢にあたる。ここに効率の本質がある。

 多くの人に会うから、会うべき人がわかる。多くの選択肢にあたるから、選ぶべき選択肢がわかる。

 人は横着であり、思い込みという習性がある。ひとつの行動をとってその結果がすべてだと考えてしまう。

 それゆえ、ある課題に対する解決オプションを全部書ききってしまうのは、横着さや思い込みの激しさを避けるための予防である。

 すべての選択肢につき、何らかの行動をとる。思いの外うまく進む場合もあるかもしれないし、Show-stopper(致命的な問題)にぶつかるかもしれない。しかし、Show-stopperを理解しておくことはとても大切なことである。他の課題でも同じShow-stopperに出くわす可能性があるからだ。

 たとえば、短期的な資金を求めるため、基金・財団にかけあってみたことがあるが、このとき、いくつかのShow-stopperに出会った。基金・財団によってさまざまな方針があった。

「宇宙より地球の持続的利用の実現に取り組んでいます」

「1社に資金を出すことはしません。同じような取り組みを行う複数社に出すことはあります」(世界で宇宙ゴミ除去はアストロスケールのみだった)

「技術的な実現可能性が証明できていないと無理です」

 設立2年目の私には、これらの課題はShow-stopperだった。