原告の記者会見(判決後、記者会見をする稲貴夫氏〈左〉)原告の記者会見(判決後、記者会見をする稲貴夫氏〈左〉) Photo by Hiroaki Miyahara

約8万社の神社を傘下に置く宗教法人、神社本庁。その不動産売却を巡り、神社界の上層部と業者の癒着があったと内部告発した結果、懲戒処分を受けた元幹部職員2人が地位確認を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁で言い渡された。結果は被告である神社本庁の全面敗訴――。業者との癒着が疑われた神社界のドンこと、打田文博・神道政治連盟会長が取材に答えた。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

疑惑の不動産は転売を重ね
半年間で1.2億円の値上がり

 地裁判決の詳細を見る前に、ダイヤモンド編集部が先鞭をつけて報じた、神社本庁の不動産売買を巡る神社界上層部と業者の癒着疑惑を簡単に振り返る(関連記事:「神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発」)。

 ことの発端は、2015年10月の神社本庁の虎の子の財産だった職員寮「百合丘職舎」(川崎市)の売却にさかのぼる。

 神社本庁は百合丘職舎を都内の不動産会社、ディンプルインターナショナル(当時。以下ディンプル)に1億8400万円で売却することで合意。ところが、その翌月の同年11月、ディンプルから別の不動産会社に百合丘職舎が転売される。その額は2億1240万円だ。つまり、ディンプルは百合丘職舎を右から左に流すだけで3000万円近い粗利を得たことになる。

 話はこれで終わらない。百合丘職舎はそのわずか半年後、さらに別の不動産会社に3億500万円で転売される。短期間でディンプルへの売却額から1億2000万円超も跳ね上がったわけだ。

 当時、神社本庁の総合研究部長だった稲貴夫氏は16年12月、この売買の背後に神社本庁のトップ、田中恆清総長や神社本庁の政治団体、神道政治連盟の打田文博会長を始めとする上層部がディンプルと癒着した背任行為があったなどとする文書を作成して内部告発。これに対して、神社本庁は17年8月、稲氏を懲戒解雇し、また内部告発に協力した教化広報部長(当時)の男性も懲戒降格としたことで、稲氏ら2人は同年10月、提訴へ踏み切った。

 その裁判は、昨年3月、神社本庁の裁判担当の実務責任者として東京地裁に稲氏らを猛烈に非難する陳述書まで出していた、神社本庁大幹部とその直属部下の不倫疑惑が本編集部の記事で浮上(「安倍応援団の神社幹部が不倫か、神社界揺るがす裁判に影響も」)し、責任者の座から異動するなどの紆余曲折を重ね、およそ3年半続くことになる。

 そして、迎えた3月18日、東京地裁の伊藤由紀子裁判長は判決で、2人への懲戒処分を無効とし、神社本庁に賃金相当額の支払いを命じるという、神社本庁の全面敗訴を言い渡した。

 伊藤裁判長は判決で、田中総長と打田会長による背任行為があったとまでは認定できないが、「背任行為があったと信じるに足りる相当の理由があった」とした上で、公益通報者保護法の趣旨から稲氏らの内部告発に違法性はなく、「懲戒すべき事由と言えない」と判断した。

 神社本庁幹部の多くは、この想定外の全面敗訴にショックを受けており、また、後述するインタビューのように神政連の打田会長は怒りの言葉を口にした。

 では、判決が指摘した神社界上層部による「背任行為があったと信じるに足りる相当の理由」とは一体何なのか?