中国の高齢化が日本のビジネスチャンスになるとは言い切れない複雑な事情高齢社会へと突き進む中国、日本にとってはビジネスチャンスとなるのか? Photo:PIXTA

10年ぶりに行われた国勢調査で、高齢者の数が著しく増えていることが明らかになった中国。高齢社会へと突き進む中で、「介護」の需要も拡大していくことが想定される。隣国のこうした大きな変化は日本にとってビジネスチャンスとなるのか。これを考える上では、介護を取り巻く「三つの構造的問題」を認識しておく必要がある。(日中福祉プランニング代表 王 青)

中国の高齢化は
日本にとってビジネスチャンスか?

 5月11日に、10年ごとに実施されている中国の第7回国勢調査の結果が、中国国家統計局により発表された。それによると、60歳以上の高齢者が2.6億人となり、総人口の18.7%を占めている。65歳以上の人口は10年前と比べて6割増えて1.9億人となり、全体に占める割合は13.5%だった。一方、2020年の新生児数は1200万人となり、3年連続で減少。出生率は1952年の統計開始以来、最低の1.3である。少子高齢化が加速していることが明らかとなった。

 国勢調査の発表後、日中の福祉ビジネスに携わる筆者のもとに、日本の介護事業者から問い合わせが相次いだ。

「中国の高齢者人口が日本の人口の2倍となって、介護ビジネスのチャンスとなるのでは?」「すでに進出していた日本の介護事業者は今どんな状況?」などの類いの質問であり、今回の発表がかなり気になっているようだ。

 中国国内でも、そのタイミングで大手健康食品や保険会社など、異業種の企業が介護産業に進出するニュースが続々と報じられていた。今年3月に開催された第13回全国人民代表大会を受けての記者会見で李克強首相が「高齢者産業が巨大な成長産業となり、多様なニーズをもたらすだろう」と述べたことも、異業種からの介護業界への参入の追い風となっている。