好評の「媚びない人生」対談シリーズ。昨秋、明治大学で行われた安藤美冬氏、本田直之氏との3人でのスペシャルトーク「2012年度著名人講演会」の模様をお届けします。著書『冒険に出よう』が大ヒット中で話題となっている安藤氏ら3人が語る「就活では、どういう基準で会社を選べばいいのか」。(構成/上阪徹 撮影/石郷友仁)

どこに入れば、自分が一番成長できるか

自分を大きく見せようと<br />すると、失敗する<br />【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(後編)安藤美冬(あんどう・みふゆ) 株式会社スプリー代表。1980年生まれ、東京育ち。慶應義塾大学卒業後、集英社入社。2011年1月独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、多種多様な仕事を手がける独自のノマドワークスタイルが、TBS系列『情熱大陸』で取り上げられる。『自分をつくる学校』の運営、新世代の暮らしと住まいを考える『ポスト団塊ジュニアプロジェクト』ボードメンバーのほか、連載の執筆、講演、広告出演などの活動を行う。2013年春創刊のシングルアラフォー向け女性誌『DRESS』では、「女の内閣」の「働き方担当相」を務める。

キム 最初の就職というのは、本当に就職するというよりは大学院に行くぐらいの感覚でいていいと思うんです。自分を成長させるために大学院に行くなら、一般的に学生がお金を払うことになる。ところが、企業からお金をもらいながら学べるわけですね。でも、それを考えたら、自分がお金を払ってでも勤めたい、学びたいと思うところに入った方がいいのではないかと僕は思っています。

 だから、給与がどうの、待遇がどうの、という前に、実は大事なことは、自分自身がこの2年、3年間の中でどの企業に入ることが自分が一番成長できるのか、ということです。将来に備えて自分をつくり上げていく上で、どこが最適な環境であるか、ということこそ基準軸にするべきなんです。
 それを理解して就活先を選んでいくと、まったく見える景色は違ってくると思います。そして、いろんなところで出てくるランキングの見え方は、まったく違って見えてきます。

 実際、一生その会社に勤める人もいますが、これからの時代は多くの人が途中で軌道修正をしていくはずです。そういうことが許されているし、逆にそういうことが奨励されていく。また、それがキャリアとして評価される時代になってくると思うんです。
 本田さん、安藤さんは、2人とも転職というか、自分が築いてきたものを、ある意味では捨ててもう一回、新しい挑戦をされています。それは企業レベルでも、住む場所でも、いろんな形であると思うんですが、今まで自分が慣れ親しんだ居心地のいい環境から抜け出し、新しい挑戦をする際に、自分を支えてくれたものは何だったのでしょうか。

本田 やっぱり僕はハワイに住みたいという気持ちですよね。加えて将来、自分でビジネスをやろうと思っていたので、常に会社にいることは学びだと思っていたんです。もちろん給料をもらったら対価として結果を出さなきゃいけないわけですが。
 僕はサラリーマンを6年間やっています。最初に入った会社の後、オラクルとシティバンク。ずっと外資なんですが、選択の基準は、そこに学びがあったからです。給料は、むしろ安いところを選んだかもしれない。その先に何かやりたいことがあって、そのための転職でした。嫌で転職するということもなかったし、何か新しいチャレンジがあって、何か学べるものがあって、人のつながりもできて。そういうところを選んでいましたね。

キム 単なる転職ではなくて、まさに挑戦をして、もっとこの場所であれば自分が成長できるという確信を自分が持てたときに行動をしていたんですね。

本田 そうです。自分の進む方向性があって、それが支えになって、そのたびにいろんなスキルとか、力がつけられるんだったらそれにチャレンジしようと。

キム 一方で、安藤さんの場合は内定を取るのが難しい大手の出版社に入って、ある程度、自分の中でキャリアをつくって、20代の後半ぐらいで、これからいろんな仕事が面白くなる、そういう瞬間だったと思うんですが、退職しますね。
 今でこそ安藤美冬はいろいろ知られて、脚光を浴びていると思うんですが、退職する直後や直前はかなり自分の中で、内面的に苦しみながら決断をしたと思うんです。また、決断した後もそれほど楽な道が待っていたわけではなく、それこそ自分自身がすべてゼロから築きあげていかなければいけない。そういった状況に直面してきたと思うんですが、自分自身が会社を飛び出すという決断をしたときのことを教えてもらえますか。