先日、日本を訪れた友人がショッキングな感想を述べてくれた。

「日本の新聞を読むと、毎日、集団的自衛権のことやら、中国の覇権やらを取り上げている。まるで明日にも中国と開戦するような空気だ。今、日本ほど戦争を語っている国は東アジアにはないよ。ベトナムだって中国と本気で軍事衝突を起こすなんて考えていないだろう。中国も国内問題に忙殺され、他国との軍事衝突をたくらむ時間的余裕もないだろう」

 東南アジアを含め、東アジアを結構回った彼だけに、その感想には頷かざるを得ない説得力がある。

 無為無策の胡錦濤・温家宝政権と比べ、外交関係において越えてはいけない一線をはっきりと関係国と画す習近平政権は、見方によっては強硬的に見えるかもしれないが、実際はやはり平和路線を引き続き歩んでいくだろうと私は見る。

共産党の「集団学習会」とは

 透明度が低い中国政府だから、考えていることや目指す方向などについては判断材料が少なすぎるほど少ない。このことが中国研究の難しさだと思う。しかし、丁寧に探せば、間接的とはいえ、習近平政権の方向性を判断できる資料にたどりつくことができる。たとえば中国共産党中央政治局は、ほぼ定期的に集団学習会を開いている。

 政治局の集団学習会は2002年にスタートし、現在までに92回、平均して約40日に1回の割合で開かれている。全国から各分野の選りすぐりの専門家が12年間で160名あまり、講師として中南海(中国共産党や政府要人の官邸がある地域)に招かれた。ここでは学者の研究成果が完全かつ系統立てて説明され、さらには政策の決定にまで影響する。また、中国共産党指導部の集団学習の内容には、中国の次に進む方向が見え隠れしている。