『週刊ダイヤモンド』5月30日号の第1特集は「究極のダイエット 燃焼!知られざる2兆円市場」です。痩せたいと願う人々の飽くなき欲望をカネに換えるダイエットビジネス──。2兆円とも言われるこの巨大市場を解剖する同時に、究極のダイエットについても探りました。本当に痩せるダイエットとは何なのか。本誌ダイエット取材班の記者たちが、遺伝子、IT、痩身医療など台頭する最新ダイエットを体当たり取材して、究極の減量法を解明しています。

 経常利益は2.4倍増で、3期連続の過去最高益。昨年度の株価上昇率は440%を超え、上場企業中2番目の伸び率を記録した。

 大人気の高級プライベートジム「ライザップ」を全国展開する健康コーポレーションが、まさにわが世の春を謳歌している。札幌の新興市場から一気に東証1部へとくら替えする準備も進めており、時価総額は1000億円に迫る勢いだ。

 その原動力がライザップであることは疑う余地がない。では何がここまでこのジムを押し上げたのか。成功の秘訣は、芸能人が劇的な肉体改造を遂げると話題のCMのみならず、そのビジネスモデルの巧妙さに隠されている。

 既存の大手ジムは「場所貸しをするだけで、痩せるというゴールに到達できなかった」と健康コーポレーションの瀬戸健社長は語る。換言すれば、「痩せない程度に運動してもらい、細く長くお金を落としてくれるのが上顧客だった」(フィットネスジム関係者)。

 これに対し、ライザップの経営戦略は百八十度異なる。明確な目標数値を設定し、短期間で確実に痩せさせる。CMで流れた「結果にコミットする」というコンセプトが、高額でもすぐに減量したいという層から支持を集めたのだ。

 こうした〝結果至上主義〟と表裏を成すのが、業界の常識を覆すコスト構造で、これこそが同社のCM戦略の屋台骨を支えていた。ライザップは実のところ、高コスト体質の大手フィットネスジムとは対照的に、驚異的な低コスト経営を実現している。

 フィスコ客員アナリストの浅川裕之氏が解説する。

「完全予約制のライザップは、大手ジムのように駅前一等地で集客しなくてもいいため、立地にこだわる必要がなく、家賃の大幅引き下げに成功した」。実際、原宿のライザップ神宮前店は、最寄り駅から徒歩で10分以上離れ、大通りから一本入った目立たない雑居ビルの地下に入居している。

 同社資料によれば、一般的なフィットネスジムの場合、地代家賃は売上高の20%に達するが、ライザップは4%にすぎないという。

 しかも、「マンツーマンの筋トレが基本のライザップのジムにはプールも最新式の設備も要らないため、安上がり」と浅川氏。確かに、ライザップのトレーニング室に設置されているのは、ベンチプレスやバランスボールのような基本的な器具ばかりだ。それ故、売上高対比の水道光熱費の割合が、一般的なスポーツクラブの場合は10%を占めるのに対して、ライザップはわずかに1%。設備維持費も一般的なスポーツクラブが5〜8%のところ、ライザップは1%と、大幅に抑制できるのだ。

 このように原価を抑えることで、高い粗利益率を実現。これを原資とした巨額の資金が宣伝広告活動へと大量投入され、あのCMがお茶の間に届くというわけだ。その結果、知名度と会員数はさらにうなぎ上り。それがさらなる業績の向上につながる好循環を生んでいる。