日本語版監修者より――科学的根拠に基づく信頼できるアドバイス
本書は妊娠期(胎児期)から授乳期、離乳期、幼児期前半の2歳まで、つまり人生最初の1000日間に必要な「栄養」と授乳を含めた「食」、そしてその「与え方」について書かれたイギリスの本である。
1000日間を各時期に分断するのではなく連続的に捉え、「生涯続く健康的な食習慣を子どもに身につけてもらうこと」を中心テーマにし、数々のアドバイスを豊富な科学的データの裏付けのもとで行っている。
この本の特色は……
・「実用書」である――本書を初めから順にすべてを読み通す必要はない。妊娠期(胎児期)、授乳期、離乳期、幼児期のパートごとに章立てしてあるので、必要なパートを読むことで日々の食生活にすぐに活用できる。各パートには何をどれだけ食べさせるか、どのように食べさせるかがわかりやすく具体的に示されている。特にどのように食べさせるかについての知見は他に追随を許さない内容である。一読をぜひお勧めしたい。
・「教養書」である――信頼できる豊富な調査研究結果から引き出された妊娠期(胎児期)、授乳期、離乳期、幼児期の栄養と食に関する知見に触れる機会が得られる。これにより深く広く柔軟な思考を生みだすことが可能になり、命を支える食についての洞察を深めることができる。
・「学術書」である――科学的根拠に基づいたデータの裏付けをもとに構成されており、査読も実施されている。そしてそれぞれのアドバイスには裏付けとした参考文献が示されている。さらにデータ不足で科学的に意見が分かれる話題や確立されていない話題にはその事情を示している。このため栄養や育児の専門家ばかりではなく広い分野の研究者の方々が読まれても十分に読み応えのある内容となっている。
このような3つの視点から幅広い対象者によって読み進めることができる本書の特色は、育児書の分類に入るであろう本の中ではたぐいまれなことである。
つまり、本書は実用書としてこれから子育てをなさる方や子育て中の方だけでなく、食と健康、食と命に関心のある方すべての方に興味深くお読みいただける内容なのである。
ようこそニューワールドへ。
科学的知見に満ちた栄養と食の新世界をどうぞお楽しみください。
なお、本書の内容には日本でも取り入れたい新しい知見が豊富な半面、日本とイギリスでは食環境や食生活等において違いもある。そこで本書には文中に「監修者より」という注を入れ、日本での一般的な基準や、本書の方法を取り入れるにあたって気をつけてほしいことを示した。ご活用いただければ幸いである。(帝京科学大学教授・上田玲子)