ベスト10に現れた異変

 まずは、「国公立100大学合格力」全国ランキングを見てみよう。2020年のランキングはかなり激しく上下動があった。前回2019年のランキングと比べると、その変化の様子を感じ取れると思う。

 ベスト10に公立高校が4校と前回より倍増した。リーマンショック後に中学受験生が減少した時期の受験生だけに、公立志向が強まっていたこともある。

 5位(前回順位10位)堀川、6位(同17位)天王寺、7位(同92位)札幌北、10位姫路西(同34位)なのだが、詳しくは公立校ランキングを解説するときに譲りたい。

 さて、今回最大の注目は、1位に入った東京の国立の高校である。一般に、国立大学の付属校は教育学部の研究のためにあることが多く、優先的にその大学に入れるというわけではない。例外的に、東京工業大学附属科学技術高等学校から、年によって人数は異なるが、推薦による入学者がいるくらいで、この点が私立大学の付属校と大きく異なる。

 それでも例外はある。今回1位となった東京藝術大学音楽学部附属音楽高校は、作曲、ピアノ、弦楽器、打楽器、邦楽の5つの専攻を合わせた募集人員はわずかに40人。全校120人程度の極小規模校である。卒業生の9割は音楽学部のいずれかの専攻に進む。東京藝大の難度が年々上昇しての結果だが、STEAM教育の時代に、芸術系の大学は大切な役割を果たすことになるから、今後も難関校であり続けることだろう。

 同校の2021年の入学試験音楽実技課題曲はすでに発表されている。ピアノ専攻の場合、バッハの15のシンフォニア、リスト、ベートーヴェンのピアノソナタが課されており、ピアノの実力が相当高くないことには入学はおぼつかないだろう。

 では、学力一本の入試では他にどのような学校があるのか。実質1位といっていい2位(同6位)灘、3位(同2位)東大寺学園、8位(同3位)甲陽学院は、いずれも関西のベスト10常連の男子校である。9位にも兵庫の共学校である白陵(同12位)が入った。

 注目は、前回の62位から4位に大躍進した札幌市にある北嶺だろう。寮制男子校で、医学部志望者が多く、面倒見のいい学校として名をはせている。