女子校のこれからを託す人材

 次に、千代田区以外の東京23区内にある学校を見ていこう。男子校の女性校長はとても珍しいが、女子校の男性校長はむしろ多数派といえる。校長人事には、その学校の方向性が表れていることに注目したい。

 目黒区内には7つの中高一貫校があるものの、男女別学校は女子校のトキワ松学園だけとなった。今年で創立106年目となる伝統校は、前校長で保健体育科教員として探究型のプロジェクトアドベンチャーを推進してきた中山正秀氏から、1971年生まれの若き俊英に後を託した。新校長の田村直宏氏は、京都大理学部卒の数学と理科の教員で、教頭からの昇格となる。

 ロイロノートの使い手で、“タムタム”の愛称を持つロイロ認定ティーチャーでもあり、ICT教育の推進役でもある。前任の大阪市旭区にある常翔学園には、大阪工業大学高等学校の時代から勤務しており、物理科教員として学年主任を務め、卓球部顧問としても活躍した。2021年に教頭として本校に移り、翌年の校長就任となった。

 東京大弥生キャンパス(農学部)に程近い文京学院大学女子は、2024年に創立100周年を迎える。2009年にソニーから転じた民間出身の都立高校校長だった佐藤芳孝氏を校長に迎え、学校改革に拍車がかかった。前任の水上茂氏が中高一貫校長に就任した翌年にはユネスコスクールの認定を受けている。

 国際バカロレア(IB)認定校のアオバジャパン・インターナショナルとの教育連携も始めるなど、国際化教育の充実に力を注いでいる。中高新校長の清水直樹氏は、早稲田大教育学部卒業後、本校の世界史教員となり、2016年から高等部の校長に就任していた。

 北区にあるプロテスタント校の女子聖学院では6年間ぶりに校長が交代する。前任の山口博氏は学校法人聖学院の院長・キリスト教センター所長となる。後任には、横浜市にある捜真女学校の元校長で、男子校である聖学院の事務局長も務めた安藤守氏が就くことになった。  

 23年から共学化し、サレジアン国際学園世田谷となる目黒星美学園(世田谷区)では、女子校最後の1年間を、シスターの森下ワカヨ氏が見届けることになる。同校で教鞭を取ってきた森下氏は、学園の設立母体である扶助者聖母会(サレジアン・シスターズ)の総責任者である日本管区長である。一足先に22年に共学化し、星美学園から校名変更した姉妹校のサレジアン国際学園(北区)ともども、校長はシスターが務めることになった。