創立以来続く「自主・独立」の校風

――全体的な印象として、女子学院にはリベラルな雰囲気を感じます。

鵜崎 歴史的に、150年前に入ってきた宣教師の教育がベースになっています。必ずしも彼女らがその卒業生というわけではありませんが、マウント・ホリヨークカレッジなど、セブンシスターズと呼ばれるアメリカ東海岸のリベラルアーツの女子大が持つ自由な人間の個性を大切にする校風の影響を色濃く受けています。

――できた頃からこんな感じだったのですね。

鵜崎 昔のカリキュラムを見てみると、できた当初はいまよりももっと自由で、教えたいことを教えていたようです。

――中期的な目標として何か考えていることはありますか。

鵜崎 創立150周年の段階で、これまでの歩みを見直してきました。その結論として、やはり女子学院は変わりません。何か新しいことをやるというよりも、むしろこれまで大事にしてきたものをどうやって守っていくか。次の世代につなげていくことが大切です。

――それはどのようなものですか。

鵜崎 10年前くらいには、今後不足するIT技術者の養成が必要だから、社会の要請は理系を育てることなのだという時代もありました。世界に通用するグローバル人材を育てることが社会の要請だという時代もありました。その時その時によって変わってしまい、あまり普遍的なことではありません。

 これから何十年も先を見据えて、社会の中で有意義に働くことができる人を育てていくことが教育の中心になると思います。

――等身大の女子学院の姿をお話されている卒業生がいましたね。

鵜崎 辛酸なめ子(著書に『女子校育ち』『女子校礼賛』など)さんですね。卒業生がこの学校で学んだことを将来に生かしている様子がとても伝わってきます。

 卒業生の和久田麻由子(NHKアナウンサー)さんが、就職するときにアナウンサーありきで探したのではなく、どういう仕事をしたら社会のために役立つのかという基本的な理念を持って就職活動をしたと。それを聞いて、「ああ、学校で教わったことをしっかりと実践していて、素晴らしいな」と思いました。

――彼女は華もありますね。最近、女子学院出身のアナウンサーのお名前をよく耳にします。

鵜崎 馬場典子(元日本テレビアナウンサー)さんは時々来校されました。学年によってアナウンサーになる卒業生が多かったり、評論家などが多かったりもします。

――ロールモデルがあると憧れる部分もあるかもしれませんね。アナウンサーをされるには相当の教養がないといけませんでしょうし。こちらの学校の校風といいますと、「自主・独立」ということになりますか。

鵜崎 やはりそうでしょうね。いろいろなことに縛られない、できるだけ生徒の好奇心や興味・関心を消さない。あまり学校側から、“こうせい、ああせい”ということではなく、生徒たちがよく考えてということです。

――そうしますと、先生方の対応にも工夫がいりますね。

鵜崎 教師としては、我慢しなければいけないことが多いです。指示したいことをしないで生徒に任せるには、忍耐が必要となります(笑)。

校門のない学校。校舎北側の外壁に沿って満開のシダレザクラ