帰国生の存在が広げる可能性
――帰国子女が昔から多い印象ですが、当時から多様性を考えて入れられたのでしょうか。
宮阪 帰国生を受け入れるようになってから、もう30年弱たちます。「英語の洗足」という評価を得ていたので、日本ほど情報が入手できない海外の駐在経験者のお子さんが入学してくださるようになってきたのが始まりです。当時はまだ、帰国生プログラムがなかったので、一般生と一緒に学んでいました。
ただ、その生徒たちは抜群の英語力を持っていたので、それではもったいないだろうと、先行して招聘(しょうへい)していた系列の大学からネイティブ教員を紹介してもらい、帰国生用の英語プログラムを構築してました。当時はすごく珍しかったと思います。
その後、帰国生入試を始めました。最初は、応募してきた全員が合格したと聞いています。次第に帰国生が増えていき、それに合わせてネイティブの教員も増えていきました。
――帰国生が目に見えて増えてきた、というのはいつ頃からでしょう。
宮阪 正確にいつからとは言いづらいですが、最近では、ご自身も海外大学への留学経験をお持ちの保護者の方がとても増えています。
先日、本校で、ハーバード大学の同窓会が実施している、Harvard Prize Book(国際的な意識が高く、ハーバード大学を含む外国の大学を進路の視野に入れている生徒に、ハーバード大学同窓会から本を贈呈するという取り組み)の授与式を行いました。授与者としていらした方は、本校の生徒のお母さんでした。お話を伺ったところ、お仕事されていた時、ハーバード大に留学なさっていたということです。
――クラス編成はいかがですか。
宮阪 現在は1学年250~260人のうち、30~40人ほどが帰国生です。ホームルームは一般生との混合クラスですが、お互いにリスペクトしていて、とてもいい雰囲気です。
英語では、帰国生の取り出し授業を行っています。ネイティブ教員が毎年見直している帰国生プログラムも充実してきていて、レベルは相当高いと思います。
校長に就任した年に、当時のネイティブ教員のディレクターが、「校長先生も一緒に授業に参加してみませんか。これを読んでおいてください」と手渡されたのが、確か「Romeo and Juliet」でした。何回か授業に参加しましたが、ついていけませんでした(笑)。
――海外大学への直接進学も出てきたわけですね。
宮阪 2010年に本校から一人の生徒がアイビーリーグのコーネル大学に合格しました。当時日本の高校生が、卒業後アイビーリーグに進むこと自体がとても珍しいことでした。実は、この生徒は帰国生ではありませんでした。
それをきっかけとして、「日本人でもアイビーリーグに進学できる」と生徒たちも自信を持つようになり、以来、海外大学への進学が続いています。もちろん、その中の多くが帰国生です。ハーバード大学、イエール大学などにも進学しました。「ネイティブの先生による考えさせられる授業が、受験にとても役立った」と言っていました。