短時間で能力を見極める入試改革の影響
――入試科目を減らす目的は何だったのでしょう。
升野 新しい学習指導要領でも掲げられている思考力・判断力・表現力を正しく測る試験を行うことと、受験生の負担を減らすことがその理由でした。かつては、国語と理科を50分、算数と社会を50分、音楽・家庭・図画工作(美術)を30分で午前中に終わらせて、お昼ご飯を食べたあと、午後に体育実技を行っていました。
4教科の時間が短かったため、子どもたちの力をきちんと測る深い問題が出しにくいことがありました。いまは国語と算数が40分ずつとなったので、長い文章を読んだり、説明を書かせて表現力を測る問題も出すことができるようになりました。
体育実技は基本的な運動能力を見るためのものでした。しかし、テストだからと頑張ってしまい、転んで手をついたり、ボールを取ろうとしてネットに躓いたりで、想定外のケガが増えてしまったこともあります。
――いつ頃からそういう傾向が見られたのでしょう。
升野 入試科目の検討が始まった5~6年前くらいからでしょうか。
――入試改革によって、以前よりも学力を測りやすくなりましたね。
升野 国立校なので、入試問題は小学校での学習範囲から出題しています。社会と理科は合わせて40分なので、1教科20分程度で、問題数も限られます。少ない問題数で受験生の力を正確に読み取るというのは難題で、作問する私たちも鍛えられています。
――問題にもかなり工夫されているわけですね。
升野 本校が求めている生徒を見極めるため、記号を選んで答えるものでも、初めて見るような表現方法の資料を使って、考えさせる問題を出すこともあります。例えば地理では、日本の河川の長さと流域面積を長方形で表示したものから選ぶ図1のようなものを平成28(2016)年度に出題しています。
社会科の教員である私にはとても簡単だと思えたのですが、長方形という表現方法で河川を示したものを受験生は見たことがなかったようです。図が意味していることと、持っている知識を結び付けることができれば、答えることができます。
――良い問題ですね。
升野 いままで見たことがない発想の問題でした。そのようなアイデアを出せる同僚を尊敬した瞬間でした。
――入学後は探究活動を熱心にやっていらっしゃるから、そういう資質のある子を選ぶためにはいいですね。
升野 本校を受験しやすくなるよう、入試改革に取り組んでいます。より、思考力・表現力・判断力を問うようなものにしています。