とても自主的で自立した中学生

水上勝義(みずかみ・かつよし)
筑波大学附属中学校校長、筑波大学人間総合科学学術院教授

医学博士

 

1959年東京生まれ。筑波大学医学専門学群卒。都立松沢病院精神科医師などを経て、2012年筑波大学大学院人間総合科学研究科教授に就任、22年4月より筑波大学附属中学校校長も兼務。

 

――水上先生はこの4月から校長に就任されたばかりでしたね。

水上 就任してまだ数カ月ですが、学校の環境がいいと思います。中学生なのにしっかりしていることにまず驚きました。伸び伸びと自主的に活動することで、一人一人の良さが発揮できている。生徒の資質を引き出す仕組みが備わっていますね。

――知的で自治的、自主的な校風だとうかがいますが。

水上 私自身は、中2・中3の先輩から指導を受けたという記憶はほとんどありませんが、本校では上級生が1年生をきちんと指導していて、学年が上がるにつれ、自然とそういうことができていけるようになっていますね。

升野 中高一貫校では、高校生がリードして、中学生は受け身になってしまいがちです。その点、本校は入社3年目までの社員だけの会社みたいなもので、上級生から下級生に引き継ぐ仕組みがとても良くできていると思います。また、全員にチャンスがあり、出番があるのがこの学校のいいところかなと思います。

 先ほど触れたように、学校全体をまとめていく全校週番活動というものがあります。中2の終わり頃から中3にかけて、今週は1組、来週は2組と持ち回りで5~6人ずつ担当し、順番に全生徒が全校をまとめる役回りを担います。

――昔から生徒会活動が活発ですよね。

升野 「自治活動」と本校では呼んでいます。委員会活動には多くの生徒が、部(運動部)・研究会(文化部)活動にも中1は全員が参加しています。

 全校で1学年5クラス200人規模の学校だからこそできる取り組みだと思います。これくらいの規模ですとお互いの顔を知っていますから。

――大規模校ですと、同じ学年であっても分からないことがありますね。

升野 学校の規模は大切だと思っています。大きすぎると一つの部活で1学年40人とかになってしまい、練習も十分にできなかったりします。、小さすぎると各学年で数人ずつとかになってしまいます。学年で160~200人くらいがちょうどいい大きさだと思います。

――男女の役割分担という点ではいかがでしょう。私学の共学校もだいぶできてきましたが、中学校だとだいたい女の子がリーダーになる傾向が見られます。

升野 年によって異なりますね。選挙で選ばれる生徒会の委員長・副委員長のことを委員長陣と呼びますが、男子3人の時もあれば、男子2人女子1人、女子2人男子1人の時もあります。男女の役割分担という意識は、ほぼないと思います。

――附属小からの生徒がリーダーシップを発揮するのですか。

升野 一概には言えません。入学して最初の学級委員を4月の終わり頃に決めますが、一般小からの生徒と附属小からの生徒が半々ぐらいの年もあります。生徒たちは入学後、さまざまな活動を経て、リーダーシップを実践し、成長していきます。

――以前勤務されていた中高一貫校との違いを実感されたことが他にもありますか。

升野 運動会には一番驚きました。こうしたイベントでは先生が判断する局面が非常に多いものですが、ここでは運営を生徒に考えさせ、生徒の判断を尊重しながら進めるようにしています。「この行事によって生徒がどのように成長していくか」を、先生方が一番大切にしていることを強く感じました。そのため、若干進行が遅くなってしまうこともありますが、自分で判断し実行する経験は、かけがえのないものです。

 体育の授業中もそうです。バスケットボールの時、プレーをいったん中断して、「どういういうパスが有効か」を振り返って、話し合っていました。再開後は、パスのバリエーションが増え、明らかにプレーに変化が見えました。スパルタ式に頑張るというものではありませんでした。

グリーンボランティアの保護者が整備を担当している憩いのスペース