画像 建築士
現代家政学部からは建築士を目指す学生も

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「3本の柱」で家政学の展望を開く

――共学化は男子生徒が来ることで財政基盤を安定させるため、というお考えですか。

吉武 それはあまり考えていません。今回の改革の柱は三つあります。学部改組、入試改革、共学化です。中でも、学生募集に課題がある町田キャンパス(1984年開設)の学部改組に重点を置きました。

 家庭科の教諭になりたいが、学べるところが少ないという男子学生がいることを聞いたことも共学化を考える上での決め手になりました。実際、町田のオープンキャンパスに初めて男子が訪れ、熱心に話を聴く姿を見て共学化の意義を再認識しました。

森上展安 森上教育研究所代表
[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす)
森上教育研究所代表
1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、88年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――2011年度から現代生活学部の一部と人間栄養学部を三番町キャンパス(東京都千代田区)に移転しました。人間栄養学部は堅調ですが、町田キャンパスはいずれも入学定員よりだいぶ少ないですね。

吉武 町田キャンパスには、現代生活学部の現代家政学科を除く、生活デザイン、食物、児童の3学科が置かれています。この3学科を現代生活学部から切り離して、本学が得意としてきた生活科学領域にリーダーシップやマーケッティングをはじめとするマネジメント領域の学問を融合させた「生活共創学部」を25年度に設置する予定で準備を進めています。

 生活者の視点から、多様な人々と協働して、身近な変革を起こし、地域や社会の持続的な発展に寄与することのできる人材を育てることを目的としており、町田をあらゆる意味で「開かれたキャンパス」にしていきたいと考えています。開く以上は性別を超えて学びの機会を提供することは当然です。それが学部改組と併せて実施する共学化です。

――三番町キャンパスも共学化するのですか。

吉武 設備改修などが必要なので、26年度からと考えています。

――もう一つの柱である入試改革とはどのようなものでしょう。

吉武 自宅や塾で1日3~4時間学習する生徒がいる一方で、半数程度の生徒は自宅学習をほとんどしません。高校生は二極化しています。多くの大学には、後者の学習習慣を身に付けないままの生徒が大勢進学していると思います。こうした学生に自信を付け、自己肯定感を持たせて社会人になってもらうにはどういう教育をしたらいいのか。

 入学者を選抜するのではなく、育成型の入試として、アサーティブブログラム・アサーティブ入試を25年度から導入します。追手門学院大(大阪・茨木市)で10年前から実施されている「育てる入試」です。アサーティブは自己主張することと訳されますが、相手を尊重しながら適切な方法で自己表現していくという意味で使っています。

――共学化よりも、学部改組と入試改革が重要なわけですね。育てる入試、もう少しそのイメージを教えてください。

吉武 三つの柱のすべてが大事ですが、入試改革は本学に限らず、これから特に重要となってくると考えています。大規模な大学でも、年内入試でいかに多くの学生を集めるかが問われ、そのために総合型選抜や学校推薦型選抜が実施されています。私たちのアサーティブプログラムでは、大学の職員が高校生と個別に対話を重ねていき、自分の進路を考えるためのお手伝いをします。その中で、東京家政学院大に進みたいとなったら、第一志望としてアサーティブ入試に出願していただきます。

――やっぱり他の大学に進みたいとなると、職員はただ働きになりませんか。

吉武 その可能性はあります。それは仕方がありません。一方で、学力はどうしても必要となります。それを確認するために、国語(必須)と英語または数学のうち1教科、合わせて2教科について基礎学力適性検査を受けてもらいます。そのための自主学習システムが「MANABOSS(マナボス)」です。3教科合計で約1万4000問の問題が用意されており、何度でも繰り返し学ぶことができます。

画像 調理設備
健康栄養学部にはHACCPを取得した調理設備もある

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