姫田小夏
中国は今、一大転換期にある。その1つの方向性は“グレーゾーン”からの脱却だ。「昨日までOKでも明日からはダメ」という当局の政策転換に、日本人や企業も巻き込まれている。

今年も春節が到来、銀座・数寄屋橋界隈では中国人観光客がにわかに増え、店舗の売り場は臨戦態勢に切り替わった。だが、過去と比べると大きな変化に気づかされる。銀座四丁目の交差点では、すでに“トランク族”が姿を消していた。“ブランド品買いまくり族”も減った。

日本ブランドの化粧品は、私たちが想像する以上に中国で大人気だ。機を見るに敏な中国人のことだ、早晩、「中国資本による日本ブランド」が出現しても不思議はないと思っていたら、すでに誕生していた。

中国経済がおかしくなっている。中国の主要な経済紙を開いても、「債務危機」「連鎖破綻」「不良資産処理」など、先行きの不穏さを暗示する経済用語が目を引く。2019年の中国経済は見通しが悪い。

“対中コメビジネス”がにわかに熱い。安倍晋三首相は、10月末に行われた日中首脳会談で、日本産食品の輸入規制への前向きな対応を求め、中国側から「制限措置の緩和の検討」を引き出した。11月末、中国の税関は新潟県産のコメの輸入を解禁した。

「店舗から3キロ圏内であれば、30分以内にお届けします」という驚異のサービスがある。上海ではいくつかのアプリがこうしたサービスを提供中だが、アリババグループが展開する食品スーパーの新業態「フーマー」は、これに「商品1個から、24時間OK」という付加価値がつく。

上海では日本料理の飲食市場がブームの真っただ中。従来は上海在住の日本人が主なターゲットだったが、その市場が先細る今、「中国人向け市場」が裾野を広げている。

北京で開かれた日中首脳会談を受け、日本では「競争から協調」などと、日中関係が改善したと大々的に報じられた。安倍内閣は「日中新時代の到来」だと期待を高めるが、中国ではどうなのか。

「日中急接近」の理由は、中国が対米貿易戦争で窮地に陥っているからだと言われているが、中国に商機を見出す日本の経済界が先を急いでいたことは確かだ。ええ

10月1日の国慶節は中華人民共和国が建国された日であり、中国の国民の祝日だ。ところが、この祝日を中国の国民以上に歓迎する動きがある。それは日本の商業施設だ。

「私も帰国しようかな。このまま日本で働き続けるか、悩んでいるんです」朱麗さん(女性、仮名)は新卒採用で都内の有名大手企業に入社した上海出身の元留学生だ。日本企業への入社後は順風満帆だったが、その喜びは長続きしなかった。

日本にある中国企業の中には、目の前の商機に事業を急拡大させる会社もある。だが、この急拡大を可能にするのが、「不正行為」ということもままあるのだ。それを実際に体験したのが田中善朗さん(仮名、46歳)だ。

中国企業による日本人の雇用が都心部で顕在化している。新宿区のハローワークで「中国語ができる」を条件に検索をかけると、中国資本の求人票がいくつも出てくる。その数は想像以上に多い。

増加の一途を辿る訪日客。対応する小売業の最前線では、中国語・日本語ともに流暢で、低コストで仕事をこなす“競争力ある中国人”が大活躍しているが、思わぬ「落とし穴」もある。

日本企業の中には「一帯一路」構想がもたらす商機をつかもうとする動きがある。一方、中国の民間資本は「一帯一路」構想を追い風に各国で事業展開に乗り出している。日本企業は中国の民間資本とのパートナーシップも考えられるが、果たしてうまく行くのだろうか。

中国は14の国と国境を接している。その多くは辺境の地で、中央との格差是正は長年の課題だ。そこに現れた中国の広域経済圏構想「一帯一路」。中国はこの構想の中で、国境地帯を開発しようと急いでいる。

今や世界の市場を席巻する「メードインチャイナ」。価格の安さはもとより、豊富な種類に競争力あるモデル、そしてすばやい生産体制でその存在感がますます高まっている。しかし、ベトナムのハノイでは、その姿はなりを潜めていた。

ベトナムでは、6月に入って大規模な反中デモが頻発している。優遇政策が掲げられる経済特区に、中国企業が進出 してくることを警戒しているためだ。なぜベトナム人は怒るのか。その背景には、侵攻と反撃の歴史があった。

香港特別行政区の北側に隣接する深セン市は、「中国のシリコンバレー」として、昨今世界中から熱い視線を集める新興都市だ。だが、自由闊達なイノベーションの一大拠点という輝かしい一面の裏には、治安維強化の厳しい現実があった。

最近、中国の人々の間で「深センは上海を超えるか」が関心事の一つになっている。GDPランキングでは中国で3位の都市だが、社会主義体制の中の自由な空気が街に活気を与え、民間企業も元気があるからだ。
