八代尚宏
政府が「働き方改革」のひとつの柱として2015年4月に国会に提出した、労働時間の長さでなく仕事の成果にもとづき賃金を払う「脱時間給」制度の法案は、野党の強い反対で、2年以上も店ざらしの状態になっている。この法案が秋の臨時国会でようやく成立する見通しが立った。改めてその争点について振り返ってみる。

過労死等の事故が増え、政府の「働き方改革」でも法律で定められた上限を超えた長時間残業を罰則付きで規制することで合意されている。労働法違反の摘発を進めるためには、一般企業への定期監督等の業務の一部を民間事業者に委託することで、悪質な企業の「臨検」(立ち入り検査)に力を入れられるようにする「集中と選択」が不可欠である。

働き方改革のコアとなる「同一労働同一賃金」のガイドラインが公表された。この目的は「非正社員の待遇改善を実現する方向性を示す」とされているが、いかにして正社員との賃金格差を欧州諸国並みに是正するかという、具体的なプロセスは示されていない。どうすれば非正社員との賃金格差を縮小できるのだろうか。

9月5日公正取引委員会が「介護分野に関する調査報告書」も出したこともあり「混合介護」という新しい用語が新聞等を賑わせている。これは旧くから規制改革の大きなテーマであった医療の「混合診療」の介護サービス版であり、政府の介護保険給付と自己負担による保険外サービスとを自由に組み合わせることである。

安倍晋三首相は3日に行われた内閣改造・自民党役員人事で、「働き方改革」を担う特命担当相を新設した。安倍首相が今回目玉とも位置付ける「働き方改革相」だが、今後どのような施策をもって「働き方改革」が行われるべきなのか。

安倍政権は消費税率の10%への引き上げを先送りしました。2年半の消費税凍結期間は、シルバー民主主義に対抗して、これまで聖域とされてきた社会保障費への切り込みを早急に検討するための機会として活用すべきです。

安倍総理は1月22日の施政方針演説で、正社員と非正社員の均衡待遇のために、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えを示した。これは、元々、野党の主張であった筈で、それを与党の政策として掲げたことにはどのような意味があるのか。

アベノミクスの新三本の矢では、介護離職ゼロが主要な目標のひとつとして掲げられている。しかしそのためには、働き方の改革とともに、現在の介護保険が抱える基本的なジレンマを克服しなければならない。

今回の労働者派遣法の改正案では、与野党の対決が激化し、採決が見送られるなど混乱を極めた。中でも注目されるのが、専門26業務の派遣社員が従来はなかった3年間の派遣期間に制限されることだ。今回の改正で働き手にメリットはあるのか。

年金支給額の引き下げを憲法違反とする集団訴訟が全国で始まった。これは、今後、急速に高齢者が増える日本で、高い投票率を武器として大きな政治力をもつ「シルバー民主主義」の脅威が、現実のものとなりつつあることを示している。

2月13日、労働政策審議会の分科会報告が公表され、「残業代ゼロ」となる働き方も盛り込まれた。これを「過労死促進法案だ」と批判する声が後を絶たないが、私はむしろ「過労死防止法案」だと主張したい。

第2回
急速な高齢化に伴い、増加の一途を辿る日本の社会保障費。安倍政権には借金に依存する不安定な社会保障の構造改革が求められているが、アベノミクスはその“宿題”に答えてきたのか。総選挙を前に安倍政権の社会保障制度改革を評価する。

第482回
政府は今年6月に示した新しい成長戦略で「2020年までに女性管理職の割合を30%以上」と目標を掲げた。一方、現在の日本におけるその比率は11%に過ぎず、目標との乖離が著しい。では一体なぜ、日本では女性の管理職が増えないのだろうか。

第442回
政府は28日の産業競争力会議で、成果に応じて賃金が決まる新たな労働時間の制度について議論を行った。しかしこれに対し、「残業代ゼロ法案」との声が各所から上がり、批判にさらされている。なぜいつも労働時間の規制改革は批判されるのか。

第414回
非正社員化が進むとの声も挙がる労働者派遣法改正案。『正社員ゼロ法案』という極端なレッテルを貼られているが、本当に正社員の大部分が派遣社員に代替されるのだろうか。また、この改正によって肝心な派遣社員の働き方は改善するのか。

第376回
安倍首相は消費税率引き上げと同時に、5兆円規模の経済対策を実施するとしている。そのなかで議論を呼んでいるのが、法人税減税だ。八代尚宏氏は、賃上げと法人税減税を引き換えにするといった手段は、市場経済を尊重することに反すると指摘する。

第2回
政府の産業競争力会議で議論されて以来、批判が数多く寄せられている「解雇規制改革」の問題。これに賛成の立場を示す八代尚宏・国際基督教大学客員教授は、「企業の得、労働者の損」という認識をされがちなこの問題には、大きな誤解があると語る。
