
八代尚宏
厚生労働省は8月27日に5年に1度の公的年金の財政検証を公表した。今回、注目すべき点は、現状の年金給付水準を維持するためには、例えば、現在20歳の人は68歳9ヵ月まで働かなければならないという明確な選択肢を示したことである。

厚労省が、派遣社員に対して勤務年数に応じた賃金を支払うよう派遣会社に義務づけることが報じられた。これは正社員との賃金差を縮小させる措置とされているが、欧米の「同一労働同一賃金」とは正反対で、本来の労働市場改革に逆行している。

金融庁が6月初めに公表した「高齢社会における資産形成・管理」の報告書が、国会で大きな焦点となっている。今回の大々的な批判をきっかけに、公的年金制度の持続性を野党が参院選の争点とすれば、国民的な議論を巻き起こす点でむしろ望ましい。

日本の副業とテレワーク普及を妨げる「犯人」の正体
人手不足が深刻な問題となる中、既存の労働者の有効な活用を図るためのカギが、「副業」と「テレワーク」のような柔軟な働き方である。政府は推進を測るための目標を掲げているものの、いずれも十分な成果を上げていないのが現状だ。

経団連は22日、新卒学生の通年採用を拡大することで大学側と合意した。多様な採用方式が普遍的になれば、外国人留学生や留学中の日本人学生などへのメリットは大きい。しかし、それだけで年功序列の日本型雇用慣行が大きく変わるとは言えない。

今夏、5年に1回の公的年金の財政検証が行われる。急速な少子高齢化の進行の下で、年金財政の持続性を確保するための仕組みだ。しかし、今の年金財政の枠組みは机上の空論に近い。国が唱える「100年安心年金」を実現するために、真に必要な視点とは何か。

政府は外国人労働者の受け入れ拡大のための出入国管理法の改正案を国会に提出した。今回の新在留資格について、「単純労働を容認した」という報道が相次いでいるが、この表現は必ずしも妥当ではない。

政府は10月22日の未来投資会議で、「70歳までの就業機会確保」のための雇用改革案を打ち出した。働く高齢者の増加は人手不足や年金制度の安定化に不可欠だが、その手段として規制改革ではなく、規制強化を用いている点に大きな問題がある。

安倍晋三総理が自民党の総裁選挙に勝利し、2021年まで現政権を維持することが可能となった。今後3年間の経済政策の最大の課題は、増え続ける借金に依存した社会保障、その中でも最大の支出である「公的年金制度の改革」である。

経団連の中西会長が、現行の就活に関する「経団連ルール」を、2020年度以降について廃止を示唆したことが大きな反響を呼んだ。これを単に、日本の大企業が外資系企業に優秀な人材を奪われないためとの解釈は、本来の意図を矮小化している。

7月9日から東京都主導で主要企業が通勤時間をずらす「時差Biz」が実施されている。鉄道会社側でも早朝時間帯に臨時特急列車を運行させる等支援しており、主要駅の朝ラッシュピーク時に利用客が平均2.3%減少したそうだが、焼け石に水である。

政府の働き方改革法案が国会で成立した。しかし、残業時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度の導入に比べて、より本質的な改革である「同一労働同一賃金」については、ほとんど議論がされなかったのも事実だ。

非正規社員が不当な賃金格差を訴えた2つの事件についての最高裁判所の判決が6月1日に示された。ここでは政府の働き方改革法案の柱の1つとして議論されている「同一労働同一賃金」の具体的な問題点が顕著に示されている。

政府が平成30年国会の最重点項目とした「働き方改革法案」の1つの柱となる裁量労働制の改革が取り下げられた。これを受けて、この延長線上といわれる「高度プロフェッショナル制度」についても、その撤回を求める声が高まっている。

安倍総理は、企業収益の拡大を労働者の処遇改善に結び付けるため、経済団体に対して春闘の賃上げ率3%を「社会的要請」として求めた。これは昨年の2%強の水準を大きく上回るもので、これを実現した企業には大幅な法人税減税というアメまで用意されている。しかし、賃上げ3%という目標達成のために春闘賃上げの定昇部分を維持・拡大させることは、安倍政権の掲げる「働き方改革」とも矛盾する。

安倍晋三総理は2020年度末までに保育所に入れない待機児童の解消を目指す「子育て安心プラン」を打ち出した。しかし、旧態依然の児童福祉制度を「健全な保育サービス市場」に改革し、待機児童問題に終止符を打つとともに、付加価値の高い保育サービスを成長産業として発展させなければ、本来のアベノミクスの成長戦略とはなりえない。

政府が「働き方改革」のひとつの柱として2015年4月に国会に提出した、労働時間の長さでなく仕事の成果にもとづき賃金を払う「脱時間給」制度の法案は、野党の強い反対で、2年以上も店ざらしの状態になっている。この法案が秋の臨時国会でようやく成立する見通しが立った。改めてその争点について振り返ってみる。

過労死等の事故が増え、政府の「働き方改革」でも法律で定められた上限を超えた長時間残業を罰則付きで規制することで合意されている。労働法違反の摘発を進めるためには、一般企業への定期監督等の業務の一部を民間事業者に委託することで、悪質な企業の「臨検」(立ち入り検査)に力を入れられるようにする「集中と選択」が不可欠である。

働き方改革のコアとなる「同一労働同一賃金」のガイドラインが公表された。この目的は「非正社員の待遇改善を実現する方向性を示す」とされているが、いかにして正社員との賃金格差を欧州諸国並みに是正するかという、具体的なプロセスは示されていない。どうすれば非正社員との賃金格差を縮小できるのだろうか。

9月5日公正取引委員会が「介護分野に関する調査報告書」も出したこともあり「混合介護」という新しい用語が新聞等を賑わせている。これは旧くから規制改革の大きなテーマであった医療の「混合診療」の介護サービス版であり、政府の介護保険給付と自己負担による保険外サービスとを自由に組み合わせることである。
