
金子 勝
コロナショックは金融市場にも波及、世界同時株安に陥り、バブルとその崩壊が繰り返されてきた世界経済は改めて脆弱性を露呈した。超金融緩和で株高を“演出”してきたアベノミクスも化けの皮がはがれた。

安倍政権の体質は開発独裁に起きる「仲間内資本主義」に似ている。身内だけに「利益」を分け合い、権力に近い人間や企業だけが優遇される“縁故主義”では新しい産業は育たず経済社会も衰退する。

安倍改造内閣は発足から2ヵ月で閣僚の辞任や政策の中止が相次いでいる。懸念されるのは、政治の無責任や弛緩が経済政策にも影を落とし、国民生活の基盤が崩れかねないことだ。

日韓関係は双方ともが政治の利害、思惑が優先して強硬姿勢を続けるチキンゲームになっている。日本の対韓輸出規制は戦後の通商政策の変質であり、産業の利益を著しく損なう愚策だ。

トランプ大統領が2020年の大統領選への再出馬を表明。「自国第一」のトランプ流による世界の混乱はさらに続く見通しだ。中でも「最強国の保護主義」が貿易のブロック化を招くリスクは高まる一方だ。

平成が終わるのにバブル崩壊後の平成の初めに戻った既知感がある。“大転換期”なのに財政と金融緩和で需要を支えることを繰り返してきた。こうした失敗の集大成にすぎないアベノミクスが自壊するのは当然だ。

「戦後最長景気」が喧伝されているが、格差拡大や実質賃金の下落など、“病巣”はむしろ深刻化した。目先の景気に固執した政策自体が経済破綻の誘因だ。危機回避の政策への転換が急務だ。

消費増税の際の景気の落ち込みを防ぐため商品券配布などが検討されているが、もともと財政健全化計画自体が非現実的な成長率見通しを前提にした「粉飾計画」だ。小手先の対策でなくまともに財政危機に向き合う時期だ。

世界同時株安など世界経済に不透明感が強まるが、異次元緩和を進めてきた日銀は新たなショックが起これば、自らも打撃を受けるだけでなく、中央銀行の本来の機能を果たせない可能性がある。「中央銀行の死」が日本経済の最大のリスクだ。

経済の好調が「安倍長期政権」を支える要因とされるが、「見せかけの好景気」に過ぎない。先端産業は米中などに取り残され、いずれ異次元緩和の失敗と同時に産業の悲惨な状況が一気に表面化する。

再生可能エネルギーを2050年に向け「主力電源」にすることを初めて明記したエネルギー基本計画が策定されたが、その道筋は見えない。地域独占や原発維持を掲げる電力会社の既得権益が残されたままだからだ。

米朝首脳会談で朝鮮半島の「非核化」の流れを作る一方、同盟国までを貿易戦争に巻き込みかねないトランプ外交を動かしているのは何なのか。キーワードは「ポピュリズム」と「ビジネスマン的な取引」だ。

国内問題で支持率が低下すると「外交」で挽回してきた安倍首相だが、最近では成果を上げられないどころか、朝鮮半島問題などでは日本の存在感はなくなり、「ジャパンパッシング」の構図だ。

公文書が改ざんされた森友問題の背後には、政権運営や政策が首相に近い一部が担い、情報が隠されチェックが利かないまま、権力者の周辺に利益がばらまかれる“縁故資本主義”の蔓延がある。

安倍政権の「生産性革命」は、非正規を増やし「ブラック労働」を生んだ政策の失敗を繰り返す恐れがある。間違った成長戦略のもと生産性を上げようとすれば、労働強化につながるだけだからだ。

大手メーカーの無資格者による品質管理やデータ改ざんが相次いで表面化したが、その源流は、バブル崩壊後、「失われた20年」を生んだのと同じだ。誰も責任をとらない体制のもとで、問題の本質に目をそむけて解決を先送りする“日本病”が今も続いている。

株価が連騰し、バブル崩壊後の戻り高値を更新しても豊かさを感じないのは、株価至上主義の経営で労働分配率は下がり続けているからだ。消費が伸びずに国内市場が縮小するだけでなく、目先の利益を追うことで企業の競争力も弱くしている。
