鈴木明彦
日本銀行は7月の金融政策決定会合で今後1~2年の国債買い入れの減額計画を決め、実施に踏み出すが、買い入れ額は現在の月6兆円を4兆円程度減らし、月2兆円程度にする可能性が考えられる。同時の追加利上げの予想も市場にはあるが、7月かどうかはともかく、利上げが秒読み段階にあることは間違いない。

6月13~14日の金融政策決定会合では、長期国債買入れを減額していく方針が決まり、7月30~31日の次回会合では、今後1~2年程度の減額が具体的に決まることになった。しかし長期国債の買入れ減額の決定は、すでに1年半にわたって続いていたことの追認に過ぎず、日銀も金融政策の変更とは考えていない。だからといって、7月会合での「追加利上げ」を日銀が諦めているわけではない。日銀が長期国債買入れの減額方針を発表した経緯を整理するとともに、7月会合での追加利上げの可能性は長期金利の上昇次第であると指摘する。

日本銀行は2%の物価安定目標の達成には至っていないと判断しているが、消費者物価は2%の上昇を続け、10年続けた異次元金融緩和も終了させた。さすがの日銀もデフレ脱却というスローガンを使いづらくなり、今では「賃金と物価の好循環」という新たなスローガンが生まれた。物価の上昇が先行している以上、賃上げしても実質賃金が増えることはないと指摘するとともに、日本経済が目指すべきは賃金と物価の好循環ではなく、「価値と所得の好循環」であることを提言する。

歴史的円安局面や電気・ガス料金を抑えてきた物価対策が終わるなどで市場では追加利上げ観測が出るが、植田日銀の政策金利引き上げのシナリオは長期金利の水準上昇が鍵を握る。さらなる円安の進展や物価上昇見通しの上方修正がなくても、長期金利が1%台半ばに向けて上がれば、政策金利引き上げの環境が整う。

日本銀行の植田和男総裁は、マイナス金利解除を決定した3月18、19日の金融政策決定会合後の記者会見において、これからは短期金利を主たる政策手段とする「普通の金融政策」を行っていくとの見解を示したが、異次元金融緩和の出口を抜けても、伝統的金融政策に戻れたわけではない。

円安が進展する中で開催された4月の金融政策決定会合においても日本銀行は金融政策の現状維持を決定。円安放置との批判が高まったが、うかつに円安との戦いを始めることは日銀にとって最悪のシナリオになるかもしれない。日銀が円安対応のために金融引き締めに動いたとしても日銀に勝ち目はないことを指摘するとともに、批判が高まっている中でも植田総裁が会見にて「普通の金融政策」の方向性を示したことを解説する。

日銀は3月金融政策決定会合で異次元緩和の幕引きを決めた。植田総裁は当面は「緩和維持」を強調したが、今回の決定は予想以上に今後の利上げやマネタリーベース縮小を念頭に置いている印象だ。政策金利引き上げはすぐには難しいにしても、4月に短期金利の誘導目標を0~0.25%に拡大する可能性はある。

2024年の春闘・賃上げ率は33年ぶりの5%台に達し、政労使一体となって掲げられた「物価に負けない賃上げ」というスローガンが実現し、日本経済が新たな成長局面に入ろうとしているとの見方も出てきた。しかし、物価上昇が先行してしまっている以上、物価上昇に負けない賃上げが実現したとしても、賃上げによるコスト増が販売価格に転嫁されてくれば、物価上昇率がさらに高まる悪循環が続くことになる。デフレ脱却の意味の移り変わりを振り返るとともに、横並びの賃上げで実現するのはデフレ脱却ではないことを明快に解説する。

3月か4月のいずれかの金融政策決定会合で、日銀がマイナス金利の解除など異次元金融緩和の出口を抜けるとの見方が強まっている。今年の賃金改定状況を考えれば、日銀によるマイナス金利解除は既定路線だろう。賃上げだけでなく物価や景気を確認するためにも、日銀によるマイナス金利解除のタイミングは3月ではなく4月の可能性が高いことや、3月の金融政策決定会合で期待すべきは、現状維持に対する委員からのマイナス金利解除の議案提出であることを指摘する。

日銀が目指す「デフレ脱却」は物価下落を解消するだけではなく、賃金を含めた人への投資や研究開発投資で稼ぐ力を強め、新たな価値創造に相応の価格が付いて経済が回る「成長型経済」への転換だ。その環境作りや支援のためゼロ金利政策を軸にした緩和政策が物価目標達成後も続く見通しだ。

1月の金融政策決定会合でのマイナス金利解除は見送り。物価上昇率のピークアウトが見込まれることから、マイナス金利解除は難しいとの見方もある。しかし日銀は、これを承知したうえでマイナス金利解除を目指そうとしている。植田総裁のこれまでの発言を紐解くことで、4月の決定会合までにマイナス金利を解除するのが日銀の描くシナリオであることを指摘するとともに、これまでの金融政策の修正でYCCやマイナス金利はすでに骨抜きになっていることを解説し、マイナス金利解除後は、ゼロ金利政策という金融緩和が続くことを展望する。

日本銀行の植田和男総裁は、昨年(2023年)12月の金融政策決定会合後の会見で、基調的な物価上昇率が徐々に高まっていく確度は引き続き高まっているとしたうえで、賃金と物価の好循環を今後も見極めていく必要があるが、インフレ率が低下を続けることで実質賃金が好転する見通しが立つのであれば、足下で実質賃金が低下していても出口の判断は可能という趣旨の発言をした。ただし、市場関係者などからは今年(2024年)早々にマイナス金利政策の解除とした出口戦略を決断することはないとの見方が多い。足元の経済状況と植田総裁の発言内容を考慮し、今年早々にも日銀が出口判断を示す可能性があることを示すとともに、出口判断の後に予想される金融政策のあり方を明快に提示する。

日銀は来年1月の金融政策決定会合で異次元緩和の終了を決める可能性が高く、その後はゼロ金利の下での時間軸政策で市場実勢に委ねながらも緩和策を続ける見通しだ。だがその先、利上げに転じるとなれば日本経済の成長力強化に加え日銀保有国債の圧縮、2%物価目標見直しが必要だ。

岸田首相は、インフレの悪影響を防ぐために物価高対策を打ち出しているが、そこでもデフレ脱却というスローガンを使っている。しかし、デフレ脱却という言葉が意味するところは、物価動向の変化に合わせて変わってきている。デフレ脱却の意味の変遷を振り返りながら、岸田首相が掲げるデフレ脱却がアベノミクスと180度違うことを説明するとともに、岸田首相が言うところの「稼ぐ力」を強くするためには、政府ではなく民間セクターがカギとなることを指摘する。

植田和男総裁が率いる日本銀行の出口戦略は、単に「異次元金融緩和」からの脱却だけではない。「非伝統的金融政策」そのものからの脱却を目指している。今年7月以降、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化を進めるなど、すでに異次元金融緩和の出口に近づきつつある。

日本銀行は10月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用のさらなる柔軟化に踏み切った。ゼロ%程度という10年金利の誘導目標は維持しているが、今回の政策変更は事実上の長期政策金利の引上げと考えるべきだろう。日銀が短期ではなく長期の政策金利引き上げに踏み切った理由に加え、2度にわたるYCC運用の柔軟化の狙いや、日銀が異次元金融緩和の出口を抜けるのに慎重になる理由を明快に解説する。

消費者物価上昇率がずっと「2%物価目標」を超えているのに金融緩和が続くのは、円安加速やインフレ高進の状況は政策変更のタイミングには適さないと日本銀行が考えているからだ。緩和の「出口」は早くて来年1月か4月と予想される。

政府と日本銀行の共同声明(アコード)の実態は日銀に2%の物価目標を掲げさせ、異次元金融緩和を迫るものであった。しかし足元では2%を超える物価上昇が続いており、異次元金融緩和の終了は視野に入っている。異次元金融緩和を終わらせた後に必要となる新しいアコードの考え方を示すとともに、2%に変わる新たな物価安定目標を提示することの重要性を語る。

岸田首相も経済界に賃上げを求めるなど、いまや「物価上昇に負けない賃上げ」が「デフレ脱却」に代わる国を挙げてのスローガンになった感もある。人件費が抑えられ、労働分配率の低下が続いていたことが日本経済の活力を削ぐ要因の一つであったとすると、ここにきての賃上げムードの広がりはポジティブに評価すべきだろう。しかし、物価が上がったから賃金も上げましょうというのでは、物価に合わせて賃金を決める従来型の組合交渉のスタイルが、インフレとともに復活しただけだ。物価上昇とともに賃金を引き上げることの問題点を指摘するとともに、目指すべきは価値の拡大と、価値の拡大に見合った所得の上昇であることを解説する。

日銀が「YCC柔軟化」に踏み出したことで今後の緩和政策の修正を予想する声があるが、植田日銀は金融緩和の「出口」を急ぐのではなく「多角的レビュー」を通じて非伝統的金融政策自体を終わらせることを考えているように見える。
