
鈴木明彦
新型コロナウイルスとの戦いはワクチン接種が始まり終盤戦に入ったが、開発で出遅れ自前のワクチンがない日本は、感染防止と感染者の隔離・治療の「専守防衛」に徹することが重要だ。

コロナの感染抑制に成功した中国は、2035年までに中等先進国になるという目標を打ち出した。それには所得水準を15年間で2倍にしなくてはならない。中国は本当に中等先進国になれるのだろうか。これまでの経済成長を振り返るとともに、これからクリアしなければならない条件、そして国際競争力を高めるうえで最適な人民元政策を考える。

2020年の日本経済は、コロナショックに見舞われて大幅なマイナス成長を余儀なくされた。今の日本景気は着実に回復しているが、2021年の経済成長率はゲタを履いてプラスに転換するものの、2021年も緩やかな景気回復が続くとは単純に考えにくい。日本景気を長年ウォッチしてきたエコノミストが、リーマンショックと今回のコロナショックの違いを解説し、2021年の日本景気の行方を大胆に解説する。

日本銀行が「政策点検」を打ち出したのは2%物価目標の実現が遠のく中でコロナ対応の特別オペをコロナ後も強いられる懸念があるからだ。新たにマイナス金利の継続をコミットメントに加えるなどが予想される。

コロナ感染の第3波は過去最高の感染拡大であり感染爆発を起こさないことが最優先課題だ。コロナ対策では感染防止第一と経済重視の考え方が調整されず、迷走することが経済には一番のリスクだ。

TPP交渉は、オバマ政権時の米国が中国をけん制するために参加を表明し、日本も遅ればせながら参加表明したという点で、米国追従の日本外交の典型例のような形で始まった。しかし米国は、トランプ大統領によって突然TPPを離脱。それでも日本が諦めず、残った11カ国でTPP合意に至ったことは、それまでの日本の外交とは一線を画すものとして評価できる。米中対立が続く中、日本は独自の外交努力で手に入れたTPPをどのように扱うべきか。

新型コロナ対策を論じるときに「命と経済の両立」というフレーズがよく使われる。確かに、人の命も救うし経済も活性化する対策ならば、誰も文句はない。しかし、そのような対策が果たして存在するのだろうか。最後には、両者のバランスをどうとるのかという選択の問題が残る。感染防止を第一に考える専門家と経済を重視する政治家の考えをそれぞれ整理し、Go Toキャンペーンなどの需要喚起効果と、政府がとるべき需要喚起策のあり方を論ずる。

金融機関を通じた資金供給の伸びがバブル期以来になったのは銀行が日本銀行の金融支援特別オペを活用して融資をすれば利ザヤを稼げるからだ。企業の資金繰り支援は重要だが長引くと新たなリスクが生まれる。

新型コロナウイルス感染の広がりは、世界の経済活動を停滞させ、今年前半の世界経済は大きな収縮を経験することになった。しかし、日本経済の現状から先行きまでのすべてを新型コロナで説明してしまう傾向が強すぎないだろうか。現在こそ、ムードに流されない冷静な観察が必要だ。景気とコロナとの関係でよく言われている「6つの通説」を冷静に検証する。

アベノミクスは成長率をそれほど高めたわけでないが、それでも安倍政権が歴代最長政権になったのは看板の「デフレ脱却」が実現せずマクロ政策をいつまでも打ち続けたからだ。

コロナ対応のための日銀の資金供給によって、マネーストックが拡大している。これまでも日銀当座預金への+0.1%の付利は行われていたが、今回の付利は、貸出しで対応した金融機関だけが得られるメリットだから、金融緩和につながっているのだ。日銀当座預金への付利で金融機関への貸出金利を実質的にマイナスにした日銀は、発想の転換でゼロ金利制約を克服したといえる。これを機に、評判の悪かったマイナス金利政策の運営方法が修正されたり、一気に廃止に向かう可能性はあるか。

景気の「山」が2018年10月と認定されたが、政府内では景気判定方法の見直しを求める声が上がる。景気変動が小さくなる中で判定方法の見直しが必要な面はあるが、「戦後最長の景気拡大」にならなかったのが理由なら筋違いだ。

内閣府の経済社会総合研究所は、景気動向指数研究会を早ければ7月中にも開催し、2018年10月を景気の山と認定する見込みだ。景気後退はもともと分かっていたことだったが、意外だったのは、政府がこのタイミングで景気後退を認定しようとしていること。2018年10月から景気が後退していることを認めると、アベノミクスにとって色々不都合なことが出て来るはずだ。今になって政府が景気後退を認めた理由を、官庁エコノミストがおかれた立場などから考察する。

5月の経済指標も厳しい結果となったが、サプライズではない。分かり切っている景気の厳しさを強調するより、いつ景気が持ち直してくるのかを考える方が大事だ。「夜明け前が一番暗い」という言葉があるように、景気は持ち直しの動きがすでに始まっていると考えらえる。第二波の襲来も視野に入れながら、ウイズコロナ時代の日本景気のあるべき姿を考える。

コロナ対応で日本銀行が企業金融支援策の拡充を打ち出したが、企業向け貸し出し増に応じて銀行の日銀準備預金にプラスの付利をつけるなど、評価の芳しくないマイナス金利政策の骨抜きと同時に延命を図る日銀の思惑も見える。

日銀は、コロナ禍による経済停滞に対応するため、中小企業等の資金繰り支援を拡充した。資金繰り支援特別プログラムのうち、CP・社債等の買入れ以外の施策では、利用残高の2倍の金額を金利ゼロ%の「マクロ加算残高」に加算すると同時に、利用残高に相当する日銀当座預金に+0.1%の付利をすることになった。これは、従来のマイナス金利政策を一段と形骸化するものだ。もっとも、これまでは見せかけのマイナス金利政策だ。今回の決定で、日銀は「本当のマイナス金利政策」に踏み込んだと言える。

コロナショック対応で日本銀行は「金融危機回避」の緩和強化策を相次いで打ち出したが、その中にはマイナス金利の“骨抜き”や「量の縛り」を弱めるなど金融政策「正常化」に向けての深謀遠慮がうかがえる。

新型コロナウイルス対策は、世界各国で経済活動の再開へと舵が切られようとしているが、日本は緊急事態宣言の対象が全国に広がるなど、中国や欧米に後れをとっているようにも見える。しかしコロナとの戦いにおいて、感染抑制と経済活性化を同時に達成できる政策などない。緊急事態宣言が続いていても、日本経済は4~6月期が景気の底となるとみられ、焦る必要はない。中長期の日本経済をサポートする政策対応を考える。

新型コロナウイルス問題で各国政府は感染拡大防止と経済収縮からの脱却という相反する課題に直面する。日本は中国や欧米に比べても経済再開の時期は遅れ、V字回復も難しいが、焦らずやるべきことに取り組むしかない。

3月の月例経済報告で政府は景気判断を大幅に下方修正したが、文言には「景気後退」を示す表現はない。コロナショックによる一時的な落ち込みのせいにして経済対策でV字回復を狙い、「景気拡大」は維持する作戦のようだ。
