原田 泰
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、足元の経済にも大きな影響を与えているが、過去の経済政策に対する評価や検証を困難にさせるという、経済学者にとっては非常に厄介な事象を引き起こしている。その最たる例が2014年4月の消費税増税の影響だ。

5月25日に緊急事態宣言が解除されてから約1カ月がたった7月2日、東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は再び増加し始め、7月7日時点で、6日連続で100人を超えている。再び緊急事態宣言の発令もささやかれ始めたが、実際に再発令となった場合、日本経済にはどのような影響が出るのだろうか。

新型コロナウイルス感染症による景気の落ち込みから急回復させるべく、さまざまな財政支出が行われている。これについて、さらなる財政悪化を招くため、増税をセットにすべきだとの主張がなされている。しかし、これには根本的な問題があることを指摘しておきたい。

新型コロナウイルス感染症による経済コストは大きい。感染拡大阻止のために、感染者かどうかにかかわらず、人との接触を8割削減するため、経済活動がストップしてしまうからだ。では、感染者を見つけ出し、隔離して接触を削減することで、感染拡大阻止は可能なのだろうか。その場合の経済コストはどうなるのだろうか。

新型コロナウイルスの感染者数(患者数)、入院者数、退院者数、死亡者数は今後どうなるか――。本稿では、統計的分析に基づき、大都市圏を含むいくつかの都道府県でその推計を行った。その中でも特に注目すべきと考えた、東京都と愛知県の推計値の比較に関する論考を中心にお届けする。

新型コロナウイルスの感染者が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の一件は、感染者712人、死者13人に及ぶ惨事となった。この悲劇から得られる教訓を導き出すため、感染者のデータに基づいて統計的に分析。そこから「7つの教訓」が見えてきた。

日本の新型コロナウイルスの感染者が欧米と比べて少ないという状況について、日本は検査をしていないから患者が少ないのだという議論がある。果たしてこの説は正しいのか。本稿で統計的に検証する。
