マッキンゼーで足腰を鍛えた後は
取り組むことに“飛距離が出る”

山崎 ところで、世界に通じるクリエイティブに携わっている瑞子さんも、HBSでジャパンIXPの企画・運営に携わってきた私も、ともにマッキンゼー(・アンド・カンパニー)出身です。在籍期間は重なっていませんが、あらためて瑞子さんがマッキンゼーから教わったものってなんでしたか?

御手洗 私は大学時代までNGOやボランティアなどを熱心にやっていました。でも、世の中の大半を占めるビジネスの考え方や動き方を理解しないまま新しい価値を生み出すのは難しいと感じました。そこで、ビジネスの考え方やダイナミズムを学ぶためにマッキンゼーに入りました。繭加さんにとってマッキンゼーはどうでしたか?

著者:山崎繭加(やまざき・まゆか)さんプロフィル/ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) 日本リサーチセンター アシスタント・ディレクター。マッキンゼー・アンド・カンパニー、東京大学先端科学技術研究センターを経て、2006年よりHBS日本リサーチセンター勤務。主にHBSで使用される日本の企業・経済に関するケース作成、東北を学びの場とするHBSの2年生向け選択科目ジャパンIXPの企画・運営に従事。また、特任助教として東京大学医学部にてグローバルヘルス・アントレプレナーシップ・プログラムの運営・教育に関与。東京大学経済学部、ジョージタウン大学国際関係大学院卒業。

山崎 マッキンゼーで学ぶことというのは、決して利益中心のビジネスの世界だけではないですよね。鍛えられる考え方や意思決定の仕方、頭の動かし方、ものの捉え方みたいなものを学び、あらゆる分野で使える人間に育ててもらえる。それはHBSも似ていて、「とにかくここに行けば次に繋がる力が付くんじゃないか」ということで入学する学生が大半です。

御手洗 筋トレとか基礎練みたいなものですよね。

山崎 そう、筋トレにとても近い。

御手洗 私も「マッキンゼーに行ったのは、足腰を鍛えるため」という言い方をよくしていますが、その鍛えた足腰を何に使うかはそれぞれの意思なんですよね。マッキンゼーでは「○○をしろ」とは一切言わない。「社会のために役立つべきだ」とも「大きな利益を生み出すことがいいことだ」とも言わない。辞めたあとの進路も、お笑い芸人になった人もいれば、起業する人もいて、多様ですよね。

方向性は人それぞれだけれど、何をやってもある程度の飛距離が出るというか。ベクトルでいえば、向きはバラバラだけれど、長さが出るような鍛え方をしているのかなと思います。そうそう、マンガ『ドラゴンボール』で、小さい頃の悟空は亀の甲羅を背負って修行しているでしょう。で、外すと急に強くなっている。マッキンゼーにいるときって、亀の甲羅を背負っている気がします(笑)。

山崎 (笑)いいたとえですね。確かに飛距離という点で言えば、分野を定めた時にその力がすごく発揮できるというのはありますよね。

御手洗 さきほどマッキンゼーとHBSは環境が似ているとおっしゃっていましたが、HBSの学生さんは卒業後、どういう道に進まれる方が多いんですか。

山崎 それがこの10年ですごく多様化したんです。学費が高いので、卒業してすぐの2~3年は新たな軍資金を稼ぐ意味もあってコンサルティング会社や金融に進む人が多いのですが、その後は起業する人もいますし、非営利団体に行く人もいます。

御手洗 受け入れた学生さんたちに聞いたら、みなバックグラウンドも多様で驚きました。それまでやっていた仕事もさまざまだし、学部の卒業大学もアイビーリーグばかりかと思いきや、リベラルアーツの女子大出身という子もいる。

山崎 学校側の公式見解としては「常に一番良い学生を多様性の観点から選んで採っています」といっていますが、この5年ほどで明らかに採用基準が変わってきたように感じます。出身や経験の幅が今まで以上に広くなった印象を受けています。

御手洗 一層その人となりをみて採用しているんですね。

山崎 1万人の応募があって書類審査ののち、2000人に面接をして、1000人を採る。学校の思想が十分わかっている長年働いたアドミッションのプロがいろんな地域を回って面接しています。ちなみにジャパンIXPの2015年のコンサルティングも、非常にバリューを出したチームもあるんですよ(笑)。

御手洗 素晴らしいですね。

山崎 最後に、気仙沼ニッティングの新しいニュースがあれば教えてください。編み手さんも60人に増えたと伺ったし、さらにパワーアップされそうですね。