東証一部上場の中堅マンションディベロッパー、サンシティが、前社長で筆頭株主でもある小出泰啓氏から臨時株主総会の開催を求めてられていることが週刊ダイヤモンドの調べで分かった。

 小出氏は、上場企業としては前例のないほど徹底した情報開示と、株主によるガバナンスの強化を求めており、上場企業のガバナンスのあり方に一石を投じることになりそうだ。

  サンシティは、リーマンショック以降、業績の悪化が顕著で、金融機関の支援を受け経営再建中。そこで小出氏は、今年2月に経営責任を取って退任。同社の14.1%の株式を保有する筆頭株主として総会の開催を求めている。

 小出氏は、自身の退任後も新たな施策に乏しく、株価が低迷を続けていることから、「業績で株主に報えないのであれば、ガバナンスの強化を打ち出すことで株価上昇を図ればいい」と背景を説明する。

 小出氏が提出した総会の議案は、次の6つ。(1)取締役の選任は一括でなく、一人ごと、(2)常勤・非常勤監査役の取締役会出席率の開示、(3)監査役が要求する資料は速やかに提出するよう定款で定める、(4)取締役のグループ会社からの金銭借入れの開示、(5)取締役のグループ会社からの仮払いの開示、(6)取締役の接待交際費の開示――というものだ。

 このうち、(1)の取締役の一人ごとの選任に関しては、株主の評価を気にしない取締役は選任されるべきではないとして、「株主に取締役を選別する機会を与えることが重要だ」と説明する。

 また(4)、(5)、(6)の開示については、「業績が低迷しているにもかかわらず、多額の接待交際費を使い、会社から借入れをしている役員がいると聞いている。取締役と会社との間の金銭のやり取りを透明化すれば、会社は株主のものであるという自覚がより高まるのではないか」としている。

 昨今、取締役の報酬を開示する動きが広がっているが、役員と会社の間の幅広いお金の動きまで開示せよという提案は極めて珍しい。

 ただ先行きは不透明だ。総会自体は年末、もしくは年始にも開催されそうだが、議案に関しては当然、現経営陣は反対。小出氏も筆頭株主とはいえ持株比率は14.1%に留まり、議案可決に必要な出席株主の過半数までは届くかどうか微妙な情勢だ。

 とはいえサンシティの時価総額は10億円強。このまま株価の低迷が続けば、東証の上場規定に引っ掛かり、来年5月には東証一部から二部銘柄へと指定替えを余儀なくされてしまう。たとえ小出氏の提案に応じないとしても、何らかの対応策をとらなければならない状況であることは間違いないのである。 

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)