東国原氏の「革新」戦略

 さて、一方高知県から西に移動して、今度は宮崎県に目を向けてみよう。
 少し古い話だが、タレントの東国原氏(そのまんま東氏)が宮崎県知事に就任した。
 東国原氏が発し、全国民が注目したコピーは、「どげんかせんといかん」だった。

 では、このコピーを検証してみよう。
 東国原氏が宮崎県知事に立候補した際の戦略とコピーはこうだ。

[戦略]
新しいことを望む宮崎県民(ターゲット)×革新(提供価値)」

[キャッチコピー]
「どげんかせんといかん!」

 キャッチコピーの法則にもあるが、人は常に新しい情報を待ちわびている。
 それをニュースと呼ぶが、選挙において候補者を選ぶ判断基準は「何が新しいのか」が最大の関心事であろう。
 東国原氏は、タレントとして活動する中で、宮崎県民が何を欲しているかのアンテナを磨き、戦略を講じたのではないだろうか。

 キャッチコピーの「どげんかせんといかん」は、「どうにかして変えなければならない」を宮崎弁で表現したものである。
 その結果、知事の地位を獲得しただけでなく、任期中の2年間で宮崎県農産物の売上効果は1500億円にも達している(出典:NEWSポストセブン2012年2月19日記事)。

両者の3つの共通点

 今一度振り返ると、両者の共通点は3つある。
「信頼」「向上」「波及」である。

「信頼」とは、現地の言葉で語ることにより、ターゲットである自身の100キロ圏内の大衆を味方につけたことだ。

「向上」は、このキャッチフレーズで大衆が行動(購買・投票)を促進できたことだ。
「波及」は、県内人だけでなく、県外人の関心事まで波及させたことである。

 キリンビールと東国原氏。
 その意外な共通点とは、全国的な知名度を誇りながら、ターゲットを狭く絞った戦略で実績を上げたことである。

 両者とも全国の知名度で表現することでなく、狭くターゲットを絞り、そのターゲットのみが知り得る言語で伝えたいことをコピー表現している。
 結果として、シェア2位からシェア1位の奪還、1500億円の経済効果をたたきだしている。ぜひ、仕事で活用する際のヒントにしてほしい。

 きたる11月2日の30名限定「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座“100%一発説得”最高のプレゼン術×最強のコピー術」では、私が出しうるすべてのノウハウをお伝えする。ぜひ期待していただきたい。