全球凍結説を唱えるホフマン博士らの最大の敵は実は、科学界に根強い「斉一(せいいつ)説」にありました。

・地球は緩やかに変化するものであり、現在の地球から極端に離れた仮定は非現実的である

 とするものです。地球は(今のところ)1個しかないので、比較観察も対照実験もできません。だからどんな現象にせよ「特別なコト」で済ませたら議論になりません。その現象は、いつでもどこでも起こりえることとして、その理由を考えるのが妥当だ、というのが「斉一説」です。

 遠く離れた別の大陸で同じ(泳げない・飛べない)生命種の化石が見つかったら、「どうやって渡ったんだろう」と考えるのがふつう(斉一説的考え方)です。動くはずのない大陸を動かすのは反則なのです。でもウェーゲナーはそれを採り、証明すべく闘いました。

 氷山がないとできない石(迷子岩)が赤道直下で多く見つかったら、「どうやって氷山が赤道まで流れ着いたのだろう」「本当は赤道上じゃなかったのか」「迷子岩にべつのできかたがあるのでは」と考えるのがふつうです。全部凍ってしまったはずのない地球を凍らせるのは反則なのです。でもホフマン博士らはそれを採り、証明すべく闘いました。

思い込みを打ち破れるのは「思い入れ」と「フィールドワーク」

 ウェーゲナーは存命中、その闘いに勝つことはできませんでした(*8)が、幸いなことにホフマン博士らは勝利を収めそうです。

地球の歴史はまったく平坦でも緩やかでもありませんでした。多くの天体と衝突を繰り返し、全球凍結や巨大噴火を何度も起こす激しいものだった。そんな新しい常識が生まれようとしています。

 その闘いを支えた彼のパーソナリティは、多くの科学者が「触らぬ神に祟りなし」「全球凍結説には触れないでおこう」と感じるほどの苛烈で好戦的なものでした。しかし同時に、反論に対して彼は徹底的にフィールドワーク(現地現物)を繰り返すことで立ち向かいました。

 もちろん彼のその行動も「自説が正しい」とする思い入れゆえのものでしょう。でもそれでいいのです。ジャッジは他の人たちが下してくれるでしょう。ビジネスであれば顧客が、科学であれば多くの中立的科学者たちが。

 常識に立ち向かうプレイヤーには、自説への強烈な思い入れとフィールドワーク(=フットワーク)による試行錯誤があれば十分です。

*8 ウェーゲナーは大陸移動の原動力や仕組みを説明できず、志半ば、グリーンランド調査中に遭難死した。

参考資料
『スノーボール・アース』ガブリエル・ウォーカー(早川書房)
『酸素のはなし』三村芳和(中公新書)
「ココが知りたい地球温暖化」地球環境研究センター
『地球の始まりからダイジェスト』西本昌司(合同出版)

お知らせ

10・11月は研修の多い月。学びの秋ということでしょうか。11月はこれから、

・11/10 豊田市立小原中部小学校123年・456年「科学教室ルークの冒険」
・11/12 世田谷区立池之上小学校 単P研修「生きる力」
・11/16 ジャクエツ大阪講演会@インテックス「発想力の鍛え方」
・11/17 海上自衛隊幹部学校 幹部高級課程「トレードオフかイノベーションか」
・11/20 神奈川県立多摩高校 PTA講演「生きる力」
・11/21 日赤看護大学 認定看護管理者SL研修「発想力」
・11/24 豊田市立前林中学校 全校生徒「決める力」、同 福祉センター「生きる力」、同 元城小学校 教職員「決める力」
と続きます。対象は小学1年生から高校3年生、PTAや教職員、看護師さんや自衛官とさまざま。テーマは一緒ですけどね(笑)。がんばるぞー。

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