データで見るアルバイト不足

それぞれの店長がすでにいろいろな試みをされていることと思いますが、日本全体の状況としては、人手不足の急速な進行にまったく追いつけていないというのが実情です。ではいま、どれくらいのアルバイト人材が不足しているのでしょうか?データでその実態を見てみましょう。

こちらの図表は過去40年以上のパートの有効求人数の推移を示したグラフです。ここでいう有効求人数とは公共職業安定所(ハローワーク)における年間求人数の合計ですから、「企業がどれくらいたくさんの人を必要としているか」の目安と考えることができます。

ご覧のとおり、パート求人数は調査開始の1972年から22倍にまで急増しています。正社員も含めた全体の求人数はわずか1.7倍程度の伸びしか見せていませんから、アルバイト人材へのニーズがいかに急成長しているかがよくわかります。

では、アルバイト不足はいつごろから起こっているのでしょうか?同グラフをよく見ると、リーマンショックのあった2008年に一時的に低下していますが、東日本大震災後の復興需要やいわゆるアベノミクスなどの後押しもあってか、ここ数年で求人数は過去最大規模にまで膨れ上がっています。

「3人足りなくても2人しか採れない」が現実

また、求職者数に対して有効求人数がどれくらいあるかを表した有効求人倍率(下図)は、1980年代後半からほとんどずっと1.0倍を上回っており、「職を探している人よりも求人の数のほうが多い状況」が続いています。

つまり、このアルバイト不足は20年以上前から続く慢性的な現象だとも言えるわけですが、やはり足元での人手不足が深刻なのはたしかです。

2015年平均の有効求人倍率は1.52倍。アルバイト求職者2人に対して3件の求人があるわけですから、これは店長から見れば、「アルバイトが3人不足していても2人しか採用できない」ということです。アルバイト1人が「1.5人分の仕事」をしたり、店長自身が時間外勤務をしたりすることで、なんとか企業が回っている状況だと言ってもいいでしょう。

ただし、これはあくまでも“平均値”での話ですから、業種・地域によっては「こんなものじゃない」「もっとひどい」という実感をお持ちの店長もたくさんいらっしゃるでしょう。
たとえば、東京労働局の発表している「求人・求職バランスシート」(平成28年7月現在)を見ると、「8.07倍(接客・給仕)」「3.86倍(商品販売)」という数値が出ています。都市部・都市近郊部では本当にひどい人手不足が起きていることが見て取れます。

これだけ求人が多ければ、求職者はより条件のいい仕事へ流れていきますし、すぐに別の仕事が見つかりますから、簡単に仕事を辞めてしまいます。時給・立地・ブランドイメージなど、より条件面で不利な職場であれば、もっと深刻に人が足りない状況になってもまったく不思議ではありません。