「マンション暴落論者」がオオカミ少年である決定的な理由「2020年の東京オリンピック後にマンション価格が暴落する」など、世間にマンション価格を巡る下落の希望的観測は少なくない。そう言いふらす人たちには、どんな根拠があるのだろうか?

「2020年の東京オリンピック後にマンション価格が暴落する」「東京オリンピック開催を待たずに、マンションが大崩壊を迎える」など、世間にマンション価格を巡る下落の希望的観測は少なくない。

 こうした人は常に過去の価格を引き合いに出して「今のマンション価格は高い」と言うが、実際には価格が調整されたことなどない。過去と比べて人件費や資材調達などの上昇に伴い、相対的に価格が上がっているからだ。価格は何らかの理由があって、変動するものである。

 今回は、マンション価格がなぜ下がりにくいのかについて取り上げることにする。

「五輪後にマンション暴落」説の真贋
実は新築マンション価格は下がらない?

 新築マンション価格は土地代+建築費+粗利益の合計によって決定される。土地の仕入れは1年以上前から行われているので、価格が下落し始めたとしても仕入れの方針転換はすぐにはできない。おおよそ2年前に仕入れた土地が今分譲されているのが実態だからである。

 東日本大震災からの復興と2020年東京オリンピックの開催で需要が旺盛な建設市場では、建築費も当面下げる見込みはない。事業予算上の販売価格は土地の仕入れの段階でほぼ確定している。その意味で2018年まで新築価格が下がる理由はない。

 以前は売れ行きが悪くなると、利益を削って売っていたものだが、今はその可能性も低い。なぜなら、供給者側は供給戸数を絞れば価格を維持できるからである。新築供給を減らせば、需給バランスが改善され、価格はわざわざ下げなくてもよくなる。これは過去に何度も起きていることである。

 特に、大手供給事業者が以前の財務基盤が脆弱な新興系の専業デベロッパーから財務力のある財閥系事業者に変化した今、その傾向は顕著である。

 2008年のリーマンショック後の1年間は新築マンションの価格を下げたものの、財務力の乏しい新興系の専業デベロッパーが多数倒産したために、供給戸数が以前と比べて3分の1まで減少し、その後は価格が下がらなかったこともある。

「リーマンショックで不動産価格が暴落した」という話は自宅中心のマンション市場には当てはまっていない。リーマンショックから価格は下がり始めたが、底を迎えるまで4年を要している。その下げ幅は新築で13%、中古で7%となっている。100年に一度の金融ショックでもこの程度だった。