今回の特集で、編集部は失業された合計20人以上の方々にインタビューを行ないました。失業に至った経緯、会社側の対応、失業後の生活、今後のことなどを事細かにうかがいましたが、どのケースも似たものはありませんでした。
ただ、1つ共通しているのは、それぞれの方が勤めていた会社の対応が、「非常に雑で巧妙、悪質である」ということでした。
リーマン・ショック後、日本は未曾有の不況に突入しています。各業界の首脳は、「かつて例がないほどの深刻度だ」と口にします。それは確かにそうでしょう。
過去を振り返ってみると、1990年代のバブル崩壊は、金融機関から順番に景気が悪くなって行きました。2000年のITバブル崩壊時は、IT業界の周辺で景気悪化が進みました。
ところが、今回は製造業、金融業界、不動産業界と、あらゆる業界で同時多発的に景気悪化が進んでいます。しかも、そのスピードは急激です。それが、今回の不況の特徴と言えます。
そして今、焦った経営者は会社を守るために何をしているか。人員削減に一斉に動いています。それが、「大失業・減給時代」の背景にあります。
しかし、ちょっと待ってください。従業員はそんなに簡単に削減してよいものなのでしょうか。そんなはずはありません。人員削減をするには、踏むべき手順とルールがあります。それに、会社は社会の公器。社員とその家族の生活を守る責任があります。
手順とルールで代表的なものは、「整理解雇の4要件」です。それは、「解雇の必要性」「回避努力」「選定基準の妥当性」「協議、合理的手続きの実行」です。いずれも欠けていてはいけません。
特集内で紹介した例は、どう考えてもこの手順を踏んでいないと思われるケースが、多くありました。そして、ほとんどの方は泣き寝入りしています。こんな現状が放置されていてよいのでしょうか。
労働者側の認識不足も、雑な会社の対応を許してしまう背景にあるでしょう。
労働者の当前の権利をしっかりと理解し、不当な会社の対応には毅然とした態度で臨む。こんな姿勢が今、求められています。
経営者側も、自らに課せられた「雇用に関する責任」をしっかりと認識しなければならないのは、言うまでもありません。
そして仮に人員整理の対象となり、失業してしまったら、正しい手順でしっかりと社会保障制度を利用しましょう。生活を見直す必要があります。
特集内では、そのノウハウを盛り込んでいます。加えて、政府が推し進める労働政策もわかりやすく解説しています。
いつ、何時、経営者の横暴に立ち向かわなくてはならなくなるか分かりません。そのとき、あなたは自分の雇用と家族の生活を守れますか?
この特集を読んで様々なケースを知り、現状を把握していただくのが、「始めの一歩」かもしれません。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男)