日本が高度経済成長を成し遂げたのは、端的にいえば、米国が東西冷戦期に日本を成長させるために、日米安保条約に基づいて日本の安全保障を肩代わりし、日本の製品をどんどん購入してくれたからである。「軽武装経済至上主義」の「吉田ドクトリン」を打ち出した吉田茂元首相は、これについて「日本は米国を番犬として飼っていると思えばいい」とまで言った。日本がしたたかに米国を利用して、先進国にのし上がったという見方もできる。

 しかし、日本は先進国になりながらも、米国にどんどん輸出をする一方で、市場を保護して米国からの輸入をブロックし続けた。これが、米国の不満となり、70-80年代には、日本は上記のトランプ氏のような発言を、米国から散々聞かされた来た歴史がある。

 これは日本だけの話ではない。東西冷戦期から今日に至るまで、世界中の新興国が、米国に製品を買ってもらって成長しているし、米国に守ってもらっている。しかし、エネルギーを世界中で探す必要がなくなった米国が、「世界の警察」をやめ、世界中の国からモノを買うのをやめて、米国製品を世界に売り始めたらどうか。実は、米国はなにも困らない。しかし、日本など世界の多くの国は、頭を抱えてしまうことになるということだ。

日本が生き残る道は「自由貿易」
「グローバリゼーション」にしかない

 現在でも、日本経済は基本的に変わっていない。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の主たる目的が、円安政策による輸出産業の利益増であることが、端的にそのことを示している(第80回)。日本は、いわゆる「輸出主導型」の経済システムであり、「グローバリゼーション」という名の、「米国を中心とした相互依存型の国際経済」の中で生きているのである。

 これを、前述した英国が「英連邦という巨大経済圏」を持っていることと、比較してみるといい。いかに日本経済の構造が脆弱であるかを、嫌というほど痛感させられるはずだ。要するに、確固たる「生存圏」を持つ国が、経済を「ブロック化」してしまったら、資源がない小さな島国である日本は生きていけないのだ。日本は、なんとしても「自由貿易体制」と「グローバリゼーション」を死守しなければならない立場にあるのだ。

 この連載では、安倍政権を様々な角度から散々に批判してきた。しかし、安倍政権は、この「ブロック化」が日本に与える「リスク」の恐ろしさを、非常によく理解してると高く評価したい。「集団的自衛権の限定的行使」を閣議決定し、「安保法制」を通したのは、安全保障面における「ブロック化」への備えであるのはいうまでもない。日露関係の進展を急ぐのも、経済・安全保障両面での戦略的行動だろう。そして、TPP(環太平洋経済連携協定)である。