まず、能力や貢献に個人差のある高齢者を一律に年齢で差別する「定年」という制度は、倫理的にも問題があるし、高齢者の労働参加を増やしたい目下の国策にも反している。企業に対する定年の禁止は、社会的影響は大きいが、財政支出が不要な景気対策でもあり、社会の方がこれに合わせることが望ましい根本方針だろう。ただし、金銭補償のルール化が必要だが、正社員の解雇規制の緩和が、補完的な制度として必要だ。正社員の解雇規制緩和自体が、雇用市場の流動性を増して、柔軟な働き方をサポートする効果もある。

「週休3日」は、副業を持つ上でも、スキルに投資する上でも、余暇を充実する上でもいい制度だと思う。『ライフ・シフト」には、将来生産力が増し豊かになると労働時間が大幅に短縮されるだろうという、かつてのJ・M・ケインズの予想がなぜ実現しなかったのかに関する興味深い議論があったが、まず、一社に於ける労働時間を短縮するところから始めるのは悪くないように思う。知的な生産性が重要な職種においては、週休2日を週休3日に変更することで失われる生産力は限定的ではないかと推測する。

 副業解禁及び政府によるその後押しは、それ自体が正しいことであり、世間を面白くする上でも、個人にとってのリスク低減のためにも、いいことだ。なお、副業の解禁は、就業規則に於ける副業規制を原則として禁止するところまで踏み込むべきだ。「判例では、副業はいいことになっている」というレベルでは役に立たない。

 確定拠出年金が、原則として60歳までしか拠出できないことは、現時点で既に深刻な制度的不備であり、高齢者の労働参加促進、投資促進、いずれの国策にも反している。70歳までの延長を早急に実現すべきだろう。

 もちろん、女性が働きやすい環境作りが、社会のためにも、個々の家計のためにもプラスに働くことは疑いない。筆者は、例えば東京オリンピックにかける費用を、全国の保育施設や教育費に掛けた方が、よほど国民のためになるのではないか、と常々思うが、日本の「ライフ・シフト」を考えると、その思いがますます深まる。

 もちろん、個人は、政策をあてにせずに、できる範囲で長寿化に対処する必要がある。健康で長く生きられること自体はありがたいことなのだから。