20年後の日本はどうなるのか?

「WHAT WORKS」では冒頭にビシッと、Consider Japan.(日本の場合を見てみましょう。)という一文が出てくる。そこで指摘されているのは、もし日本がこれから女性の社会参画を促す努力をしなかった場合、2011年の時点で全人口に対する就労人口が女性63%、男性84%という数字は、これから20年で少子高齢化のために10%以上縮小すると予想されている。反対に、もしこの数字に男女差がなければ、これから20年で国内総生産(GDP)は20%上がる、というのが経済協力開発機構(OECD)がはじき出した数字だ。

この本に書かれているのは、男女差別はいけないとか、女性らしさがどうのこうのという道徳的、文化的な話ではない。人選を含め、すべてのシステムには人為的な「デザイン」があり、そこから無意識なバイアス(先入観)を取り除くにはどうすればいいのかを徹底的に検証する。なぜなら、ベストな人材を登用しないのは組織にとってマイナスだからだ、という単純明快なことなのだ。

だが、雇用における男女のバイアスを取り除くのは生やさしいことではない。アメリカの職場で行われているダイバーシティー教育やメンター制度にあまり効果はないことを著者は指摘する。ボーネットが強調するのは「システム・デザイン」、つまり人の先入観そのものを変えるのは難しいから、人事決定からなるべく「人の目」を排除し、男女格差があることをビッグデータ解析による数字で判断しようというものだ。

例えば、書類選考では顔写真や下の名前を隠す、人材応募の謳い文句をニュートラルなものにする、集団内で役割が決められてしまうようなグループ面接は行わない、なるべく多くの職種を同時に募集して相対的に判断する、企業紹介のウェブサイトにあるトップ人事の紹介コーナーに男性の写真ばかりが並ぶようなら敢えて写真は使わない、など、日本企業が何気なく行っていることのほとんどがジェンダー・バイアスを助長するようにできているということに気づかされるだろう。

世界各国の取り組みも多く紹介される。ドイツではDAXの上位100社では、今年から監督委員会の席の最低30%に女性を登用する義務が生じ、さらに3500社では女性管理職を増やす具体的な計画を提出しなければならない。スイスでは政府がビッグデータを利用して男女賃金格差を数字で出すLobibというオンラインツールを提供している。185ヵ国が加盟する世界銀行のジム・ヨン・キム総裁は昨年、グローバルスタンダードに見合う企業にお墨付きを出すEDGEに参加すると発表した。

女性に「輝け」と言うだけでは何の解決にもならない。時にはついたて1枚で解決できる「デザイン」の問題であるなら。