クルーズ船の寄港誘致を経済効果だけで語ってはいけない煙を吐く大型クルーズ船。旧型船はさらにひどく、埠頭が煤だらけになることもあるという

 12月1日、米国司法省はプリンセス・クルーズ社(本社:米カリフォルニア州)に対し、「故意に犯した汚染に対して過去最大の罰金4000万ドル(約46億円)を支払わなければならない」との判決を下した。

 同社は北米最大手のクルーズ船運航会社であるカーニバル・コーポレーション(本社:米マイアミ州)傘下のクルーズブランドのひとつ。今回の4000万ドルという高額な罰金は、同社のクルーズ船が違法に廃油を海洋に投棄したことに対するものだ。

 ワシントンポストなど在米メディアは、「スター・プリンセス」「グランド・プリンセス」などのクルーズ船で「2013年に発覚するまで、過去8年にわたって違法投棄が行われてきた」と報じた。

 日本法人のカーニバル・ジャパンは、「由々しきことだ。だが、発覚以降3年間にわたり、社をあげて環境規制を遵守するよう取り組んでいる」(広報)と話す。

 国際海事機関(IMO)が1997年に発効した海洋汚染防止条約では、油、有害液体物質、危険物、汚水、廃棄物など、船舶の航行に起因する環境汚染防止に厳しい規制が敷かれている。にもかかわらず、行われた違法投棄。ワシントンポストは「他社でも潜在的に行われている」と、その可能性を指摘する検事のコメントを掲載した。

「クルーズ船」は、日本では新しい産業だ。それだけに経済効果などの輝かしい一面がフォーカスされる傾向があるが、欧米社会では必ずしもクルーズ船を「光」としてのみとらえることはしない。それどころか近年は、世界の寄港地でクルーズ船がもたらす環境汚染に対し、抗議運動すら起こっている。