電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない。
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それが日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていない。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんな魔法のようなことが可能なのか?
『残業ゼロがすべてを解決する』の著者・小山昇社長に、人材育成のヒントを語ってもらおう。

なぜ多額の予算と
猶予を与えたか

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/

 私はかつて、システム部の高橋佑旗部長に「1億円」の予算と「1年間」の猶予を与え、ホストコンピュータの入れ替えと営業支援用のプログラムの作成を命じた。

 1億円かけて、それによって1億円以上の経費削減ができれば、プラスになる。
 高橋は「正直、1億円というお金がどれだけのものかわからなかった」と当時を振り返っています。

「最初は悠長に考えていましたが、社長から2つの名刺(ひとつが「部長」、ひとつが「平社員」)が貼られたハガキが送られてきまして、これはもう逃げられないなと(笑)。
 はじめは3人で担当しましたが、それでは回しきれなくなって、新たに4人新規採用して、7人体制で取り組みました。
 でき上がったシステムによって、営業が外出時に仮想デスクトップを介してiPadから会社のシステムに入ったり、モップやマットの数を数える際の伝票計算がラクになったので、業務効率を改善できたと思います」(高橋)

 以前、会議システムに不具合が発生したことがあります。
 担当者4人は早朝出勤を続けてシステムの復旧に努めたのですが、それを知った私は、新システムに交換するように指示を出しました。

 担当者のひとりは「まだ1年半しか使っていないので、交換するのはもったいない」と難色を示したが、私は頭にきて(笑)、ダメ出しをした。
「ダメ! 捨てちゃえ。だって、おまえたち、毎日朝早くから仕事をしているよね。早朝出勤は残業と同じ」と。

 残業は「悪」です。

 システムのメンテナンスのために社員4人が早朝出勤をする。その状態を放置するより、お金をかけてでも、新しいシステムに換えたほうがメリットは大きくなります。