丸三電機社長 竹村元秀
Photo by Kazutoshi Sumitomo

 パソコンなどの電子機器から太陽光発電といった大型機器まで、ありとあらゆる機械・機器に搭載され、作動中に発する熱を放散させる部品「ヒートシンク」。なかでも産業用機器向けで急成長している企業がある。電子部品の製造・販売を手がける丸三電機だ。

 最後発ながらトップを猛追し、市場シェアは約20%に達している。率いるのは、社長の竹村元秀。自ら磨き上げた同社の強みは「品質の高さ」と胸を張る。

 ヒートシンクは、その用途に応じて大きさも形状も千差万別だ。何十万個もまとめて自動化ラインで作る製品とは違い、一つの製品の発注数は1000個台と少ない。多品種少量生産ながら効率的かつ不良品を出さない安定した生産技術と、顧客の要望に合った技術の提案力が、丸三電機の強さの秘密だ。

 近年は特に、太陽光発電や風力発電といった環境エネルギー関連や、携帯電話の基地局など情報通信向けに顧客を拡大。リーマンショック前の2008年5月期まで、6期連続の増収増益を達成してきた。

 直近の業績は横ばいだが「資産バブルやITバブルの崩壊もくぐり抜けてきた。今回も乗り切って、次の成長へ足場を固める」と、闘志を燃やしている。

低品質・納期遅れ・高価格
“3悪”解消を目指し商社からメーカーに転身

 丸三電機の創業は1963年にさかのぼる。竹村の叔母が戦後、東京・秋葉原で始めた電子部品の販売店がルーツだ。

 竹村は71年に大学進学のため奈良県から上京し、叔母の家に下宿していた。竹村が丸三電機に入社したのは、卒業式のわずか2日後。「順調に見えた経営が、オイルショックのあおりで大変なことを知った。叔母を助け、生意気だが自分も立て直しを担う意気込みで、入社を決めた」。

 入社後は一貫して営業を担当する。当時の丸三電機は販売代理業。扱っていたのは音響機器などに使うつまみが5割弱、ヒートシンクが3割、コネクタやその他の部品が2割強だった。

 当時、ヒートシンクは搭載する製品が広がり、需要が増えていた。だが、「品質が悪い、納期には遅れる、値段は高いの“3拍子”」で、収益は上がらなかった。

「仕入れ先の工場まで出向いて、夜中まで不良品の選別を手伝ったことも多い。品質が上がれば価格が安定し、納期に必要な量も確保できるはず。だが販売代理業が仕入れ先のメーカーに品質向上を訴えても、聞き入れてはもらえない」。こうした経験から、自ら製造に乗り出すしかない、との思いを深めていく。

 折しも、主力のつまみは市場が縮小しつつあった。また、コネクタは市場規模が大きいものの単価が安く、成長は望めなかった。