その代わり、徹夜の作業はしないようにした。Vさんの腰では、長時間座っていることに耐えられないからだ。その頃は夜中に寝ていても、腰が痛くて目が覚めることもあった。腰痛も辛かったが不眠も辛かった。よく眠れない日々が続くと仕事に集中力を欠いた。いつもは見逃さない誤字や脱字を見逃してしまう。校正ミスを指摘されることも多くなった。

 Vさんはその頃週に数回、自宅にマッサージ師を呼ぶようになっていた。マッサージを受けてから寝ると、その晩は深く眠れるような気がしたからだ。

靴下を履こうとした瞬間、再度腰に激痛が…
退院後、上司の言葉に愕然

 そんな生活を送っていたVさんに、“運命の日”がやってきた。ある朝、会社に行こうと靴下を履こうと腰を屈めたとき、これまでにない激痛が腰を襲って、そのまま救急車でかかりつけの病院に運ばれてしまったのだ。

 病院では、クッションとなる椎間板は加齢のために少しずつは悪くなってはいるものの、まだ手術するほどではないとの診断を受けた。Vさんの場合、痛みが強く、トイレの介助が必要だということでそのまま入院となった。それから1週間ほど退院し、杖をついて職場に復帰したとき、上司から信じられない言葉を告げられた。

「うちの雑誌が伸び悩んでいるのはよく知っていると思う。君ももう無理はできないだろう。そろそろ若い人に椅子を譲って、君は後方支援にまわってほしい」

 Vさんは入社以来、腰痛とうまくつきあえていると思っていたが、今回の辞令は堪えた。

 確かに、ここ数年腰痛で夜中に目覚めてしまうことには心身ともに参っていた。いろんな病院にかかり民間療法も試したが、誰からも納得する答えは得られなかった。

 そんなとき、Vさんの妻が「いつか夫婦で海外旅行に行こう」と、家計をやりくりして貯金をしていることがわかった。妻のためにも、いつも腰に爆弾をかかえている人生を変えたいと心から思った。

ペインクリニックで治療を開始
痛みがひくことで、不眠も解消へ

 異動をしてしばらくした頃、高校時代の友人から『ペイン治療』というものを教えてもらった。腰痛などの痛みを注射で軽減する治療法らしい。週末を待って、予約した脊髄外科に行きMRIや問診など様々な検査をしたあと脊髄外科の医師からこう言われた。

「まだ手術をする段階ではないですね。Vさんの場合は痛みが強いようなので、まずはペイン治療をしながら痛みをコントロールしましょう」