キーンと冷えた澄んだ冬空は、東京都心でもわずかに星を望むことができる。冴え冴えとした闇で遠慮がちにまたたく光。寒い季節の嬉しい贈り物に、思わず心がホッと和むひとときである。
そんな今、東京のもう1つの“星空”――プラネタリウムが軒並みリニューアルし、新しい星の世界を提供しているのをご存じだろうか? 加えて、最新鋭の設備と世界最高水準の技術によって、その輝きはひときわ増しているのだ。
20世紀の東京のプラネタリウムを代表するような存在であった「天文博物館 五島プラネタリウム」(渋谷)は、2001年に閉館したが、その後を継ぐような形で「コスモプラネタリウム渋谷」が昨年11月にオープンした。
その開設特別番組として上映されているのが、「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-帰還バージョン」だ。これは昨年6月に地球帰還を果たした小惑星探査機「はやぶさ」の7年にわたる冒険の旅を紹介するものだ。筆者も観賞したが、CG技術が可能にした無限の星空に包まれながら、胸に迫るナレーションを聞くうちに、はるかな天体を旅しているような感動が全身を包んだ。
次は、東京のプラネタリウムのもう1つの代名詞、「サンシャインプラネタリウム」(池袋)だ。2004年3月に「コニカミノルタプラネタリウム“満天”in Sunshine City」としてリニューアルオープンして以来、毎年30万人以上が訪れるデートスポットとして人気を博した。
同館は今年7月に2度目のリニューアルオープンを予定しており、世界最高レベルの最新鋭プロジェクターを導入し、全天周映像システムで高精細な映像を表現。圧倒的な臨場感を実現する。
さらに、昨年10月にオープンした羽田空港新国際線旅客ターミナルにも、驚くべきことにプラネタリウムが存在する。これはカフェに併設したプラネタリウムであるのだが、「就航都市」「癒し・自然」「宇宙」「惑星」「星座」「銀河」といったテーマに合わせて、4000万個の星空がまたたく仕掛けになっている。非日常的なムードが味わえて、連日多くのカップルや家族連れが訪れる新名所となっている。
このように、どんどん進化する東京のプラネタリウムは、忙しい現代人が求める「必然」に思えてしかたない。空間に広がる壮大かつ荘厳な宇宙に、束の間酔いしれ、憂き世を忘れる。そんな都会の人々を癒すオアシスになっているのが、現代のプラネタリウムという存在ではないだろうか。
(田島 薫)