──そもそもの話に戻ると、最初に刑事ドラマにしたいという話があったときはどう思われました?
古賀 最初は「そんなことが可能なのか?」という心配のほうが大きかったです。でも、詳しい設定やプロットを伺っているうちに変わってきました。何と言っても「ナチュラル・ボーン・アドラー」という庵堂蘭子のキャラ設定が面白かった。通常『嫌われる勇気』のような本をドラマ化する場合、どうしても説明的なセリフに頼りたくなると思うんです。ところがそれをせずに、蘭子の謎と事件の謎を追いかけるだけでアドラー心理学への理解がちゃんと深まっていく構造になっている。
一見すると『嫌われる勇気』という本や、アドラーの思想とは対極にあるぶっ飛んだ設定に思えるんですが、実はアドラーの思想をわかりやすくスムーズに伝えるには、とてもよくできた設定なんだと脚本を読んで思いました。
自分自身を見つめ直すためのドラマ
──ドラマの作成に際しては、すべての回のシナリオをチェックされているんですよね?
古賀 ドラマのストーリー部分に関しては、完全にお任せするというのが最初からのお約束でした。我々がそこに縛りを掛けてしまうと面白いドラマにならないと思ったので。
『嫌われる勇気』という本も、もともとはアドラーの思想を岸見先生と僕とで再解釈し、再編集してああいう一冊の読み物にしたわけです。今回のドラマも『嫌われる勇気』という本を再解釈・再編集し、そのエッセンスを取り出して面白いものに仕立てていくという意味では、我々がやった作業と似ているのかなと思います。ですので、エッセンスの部分さえ間違っていなければ、どのようにアレンジしていただいても構わないし、むしろそのアレンジ自体が新しいアドラー理解を引き出すものになるかもしれないと楽しみにしています。
そもそもシナリオのチェックは最初にストーリーを知ることができるので面白いですよ。『嫌われる勇気』を書くとき、こういう風に書けばよかったのかなと思うことさえあるくらいです(笑)。