メディア側も「使いやすい専門家」に殺到

アナリストばかりを批判してきたが、一方でそんな彼らを「起用」するメディアもメディアだろう。メディアが誤った情報を発信する専門家に取材し、結果的にデマを拡散してしまうのには大きく2つの理由がある。

一つはまったくシンプルに、メディアの人間はアナリストの品質を見定める目を持っていないからだ。ここで言う「品質」とは、しっかりとした経済学の枠組みに沿ったまともな予測をする能力のことだ。しかし、テレビマンや新聞記者がそこまでの知識を持っていることはまずないし、その能力の有無を判断するのは難しい。そこで結局、大手金融機関・有名シンクタンクなどの立派な肩書きがあるアナリスト、あるいは、視聴者にわかりやすくて面白いストーリーを提供できる「先生」が指名されることになる。

もう一つは、アナリストと同様に、メディアという組織そのものが抱える問題である。たとえば新聞記者に、「相場の動きを言い当てる記事を書こう」というインセンティブが働いているケースはまずないだろう。メディアの役割は、投資リターンを高める材料を提供することではないので、それはやむを得ない。

もしもそういう記事を書いたとしても、それは予測を提供したアナリストの手柄として認識されるだろうし、そのことによって記者の社内的評価が上がるかというと、そんなことはないだろう。アナリストと同様、短期的には一定量の仕事をこなすことが求められるという意味では、記事などの「本数」を稼ぐことが重要になる。

また、営利企業でもあるメディアは、市場や経済の動きを「広く伝えること」、つまり、視聴率・購読者数を高めようとすることからは逃れられない。そのためには、些細な事象についてセンセーショナルに記事を書いたり、危機を煽るような番組演出をしたりすることが必要になる。