東日本大震災の発生から1ヵ月が経ち、復興気運が徐々に高まっている。まず早急に建て直さなくてはならないのが、電気や交通などの社会インフラだ。しかし、それらを建て直すための具体的な方策は、なかなか見えてこない。原発事故による電力の供給不足や、企業のサプライチェーンを分断する交通の混乱などが、日本経済に暗い影を落としている。今回の震災で、我々はこれまで日本が誇ってきた社会インフラがかくも災害に弱いという事実を思い知らされた。日本のインフラはどんな課題を抱えているのか。そして、それらを効率的に建て直すためにはどうすればよいのか。交通経済や公共事業に詳しい山内弘隆・一橋大学大学院教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

計画停電で急場はしのげるが
それでも電力が足りないのは明らか

やまうち・ひろたか/一橋大学大学院商学研究科教授。専門は交通経済学、公益事業論、規制の経済学など。1955年生まれ。千葉県出身。慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。中京大学商学部・経済学部専任講師、一橋大学商学部専任講師、助教授、教授を経て、2000年より現職。 運輸政策審議会専門委員(タクシー小委員会委員長代理)、建設省道路審議会専門委員、内閣府PFI推進委員会委員、国土交通省地域住民との協働による地域交通のあり方に関する懇談会座長などを歴任。

――東日本大震災の発生から丸1ヵ月が経った。4月に入り、政府は「東日本大震災復旧復興対策基本法」の概要をまとめたが、復興気運が高まる一方で、そのための具体的な方策はなかなか見えてこない。現状をどう見ているか。

 日本において、これほどインフラの重要性がはっきり問われたことは、過去になかったのではなかろうか。1995年1月に発生した阪神淡路大震災でもライフラインが機能しなくなったが、今回は広域に渡る災害だったため、事態はより深刻だ。

 電気や交通といった社会経済のネットワークに関わるインフラが被害を受けた影響は大きい。今後はこれらの社会インフラを、災害を見据えた現実的な仕組みへと再構築していくことが必要だ。

――とりわけ不安視されているのが、原発事故による電力の供給不足だ。先日、政府や東京電力は、「原則として今後計画停電を実施しない」と発表したが、いずれにせよ夏場に向けての大規模な節電は避けられない。電力不足が企業活動を抑制し、日本経済を落ち込ませる可能性は高い。

 これから夏場に向けて、1日における最大電力需要は、政府見通しによると約6000万キロワット、東京電力の見込みでは5500万キロワットになると言われる。