会場で鳴り響く大きな拍手を聴きながら、私は深い溜め息をつき、涙ぐんだ。2013年以後の日本で続いている生活保護基準引き下げは、生活保護を生きて暮らすための拠り所としている人々の生活費や住宅費や暖房費用を、磨り減らし続けている。AAAS年次大会の会場で「健康で幸せな人々で満ち溢れた、健康な地球」という希望が語られている今この瞬間も、日本の寒冷地には、充分な暖房や栄養が得られないことから、健康を害している人々がいるだろう。

 生活保護基準を引き下げ、必要だから設けられてきた各種加算をなくし、生活保護を必要とする人々を健康や幸福からさらに遠ざけようとしている日本は、すでに健康な国とは言えないのだが、さらに健康な国でなくなろうとしている。「ふつう」の健康や幸福から遠ざけられる生活保護の人々が百万人のケタで存在し、生活保護よりさらに低いレベルの生活をしている人々が高齢者を中心に1000万人以上存在すると言われ、ワーキングプアが「生活保護の方がマシ」と嘆く現在の日本は、生活保護の引き下げを重ねることによって、さらに「健康な国」から遠ざかろうとしているではないか……。

低所得家庭の「ボキャ貧」解消は
何よりも子ども本人のために

子どもの「ボキャ貧」問題解消研究の記者会見。記者席は半分ほど空席だったが、それでも40名ほどの記者が参加していた。発表を行った研究者は、左からA. Darcy-Mahoney氏、A. Mendelsohn氏、C.Molina氏

 今回のAAAS年次大会では、時節柄、多様性と貧困解消に関するプログラムが、例年よりも目についた。中には、あまりにもの程度の低さに呆れるほどのシンポジウムもあった。内容に「貧困」が含まれていれば、大きな問題点が事前に判明していない限り、採択される可能性が高まっていたのかもしれない。

 もちろん、大いに感銘を受ける発表もあった。その1つを紹介したい。低所得家庭の子ども、特にヒスパニック家庭の子どもの言葉の発達が遅れがちである問題を解決する研究だ。

研究グループが作成した、子どもの成長にとって親の語りかけがいかに重要かというメッセージビデオ。YouTubeで公開されている

 研究グループは、低所得家庭に実際に介入を行い、効果を測定した。結果として、子どもたちの語彙数・言語の発達・家庭のコミュニケーションが増加し、子どもの発達上の問題は減少した。

 もともと発達障害の研究をしていたという女性研究者は、「赤ちゃんにとっては言語も栄養。両親は最初の、最良の教師」と言う。低所得層の親たちはしばしば、我が子に対し、その「言語」という栄養を適切に与えることができない。特にヒスパニック家庭では、子どもの英語の発達が遅れがちになり、その後の学校や社会での困難、成人後の経済的困窮につながる可能性が高くなる。とはいえ親たちは、貧困ゆえに傷つきやすく、地域コミュニティとの関係を確立するのも難しく、孤立しやすい。介入のきっかけをつかむ段階にも、困難がある。