任意後見人への報酬は、契約が発効になってから発生します。その金額は、専門家へ依頼する場合、月額3万円から5万円程度が最も多いようです。親族や知人に依頼する場合は、特に決まりはなく、報酬なしの例も多いようです。あるいは、報酬は支払わないが、亡くなったときに遺言で報いるという人もいます。後見人になると、それなりの責任と作業が発生しますので、仕事として報酬をきちんと払う・もらうとした方がお互いの人間関係にとってベターでしょう。

 一方、任意後見監督人への報酬は、家庭裁判所が決定します。通常は、任意後見人への報酬より低いです。さらに、報酬以外にかかる費用として、財産管理や療養看護に必要な実費、たとえば通信費、面談や諸手続きのための交通宿泊費などが必要になります。

誰に任意後見人を頼むべきか?

 任意後見人(正確には任意後見受任者)の依頼先として、①親族や知人、②弁護士などの専門家、③社会福祉協議会などの法人、が選択肢としてあります。

 親族や知人を後見人にするメリットは、専門家に依頼する場合の「敷居の高さ」がないことです。デメリットは、親族や知人に親の財産管理や療養看護の責任が発生し、負担になることです。また、親の財産を自分に有利になるように悪用する可能性があることや後見人だけが親の財産を扱えることで、親族間で争いが起こりやすくなります。

 一方、弁護士などを後見人にするメリットは、第三者のプロの専門家に仕事を依頼できる安心感です。デメリットは、一般の人にはやや敷居が高く感じることです。また、社会福祉協議会などの法人を後見人にするメリットは、何かあったときに法人組織として責任を取ってもらえることです。デメリットは、実際に後見業務を担当する人が契約期間の間に代わっていく可能性があり、依頼者である委任者との人間関係・対応の程度が担当者で変わる可能性があることです。

 ところで、任意後見契約の3つの類型のうち、財産管理等委任契約とセットにした「移行型」が望ましいと述べましたが、財産管理等委任契約の「受任者」には、弁護士以外なれません。この理由は、弁護士以外の人がなると、非弁護士の法律事務の取扱い等を禁じた弁護士法第72条に抵触するからです。