あまりにも頻発する名門・大企業の不祥事に、“伝説の外資トップ”が危機感を募らせている。「日本の経営者は、いまこそ王道に立ち返れ」と、40年をかけて体得し実践してきた王道経営の真髄を注ぎ込んだ最新刊『王道経営』から一部を抜粋。第1回は道を踏み外し消えていく企業がいかに多いか、そして倒産・廃業に追いこまれる邪道経営と王道経営との違いを明らかにする。
経営者の最大の責任は会社をつぶさないこと
経営者の最大の責任は会社をつぶさないことである。
会社がつぶれれば、顧客、社員、取引先、株主、銀行等、あらゆるステークホルダー(利害関係者)に多大な迷惑をかけることになる。
しかし、我が国では、毎年、3万5000を越える会社が倒産や廃業をしている。倒産会社が1年に8812社で1時間に1社のペース、廃業した会社が2万6699社で1時間に3社のペース、合わせれば、1時間に4社すなわち15分ごとに1社が消滅していることになる(2015年 東京商工リサーチ調べ)。
1990年代から2000年代のはじめ、名門の証券会社であった山一證券や、国内乳製品メーカーのトップだった雪印乳業が倒産、解体に陥った理由は、いずれも社会から信用を失ったからである。
最近問題になった、東芝の不正会計に続く債務超過問題も同社の社会的な信用を失墜させ、会社の屋台骨を揺るがしている。
台湾の有力企業、鴻海の軍門に降ることで生き残りの道を摸索しているシャープは、あくまで結果論ではあるが、過剰投資が経営の足を引っ張ってしまった。
名門三菱グループの一角であった三菱自動車は、2000年代に入ってからの度重なる不祥事とその対応の悪さが災いして、日産の傘下で再起を図ることになる。
海外に目をやれば、電力供給のイノベーションで世界的にも注目を集めたエンロンは、無軌道な経営陣の行動が内部告発によって暴かれ、存在が許されないほど信用が失墜し、あっという間にこの世から姿を消した。
優れた技術力や営業力を誇る企業であったとしても、長い歴史を持つ名門企業であったとしても、邪道や無道の経営に迷い込み、道を間違えてしまえば死に至るしかない。
信用を著しく毀損して生き残れる企業はない。
倒産や廃業の理由は企業によってさまざまであるが、その背景に経営者の判断の誤りという事実があるのは疑いない。
ビジネスは結果である。倒産という結果も、成長という結果も経営の結果にほかならない。望ましい結果は、正しいプロセスの結果なのだ。