病気や加齢などで、排便や排尿が間に合わず、不自由な思いをしている人、介護で苦労している人に朗報がある。排泄を予測するウェアラブル端末が世に出るのだ。自身、留学先のアメリカで、便を漏らしてしまうという強烈な体験を経て、排泄予知デバイス「DFree」を開発したトリプル・ダブリュー・ジャパン代表取締役中西敦士さんに、起業秘話や開発の苦労、介護現場への画期的な影響などを聞いた。(ライター 奥田由意)
排泄はなくせないが
準備することはできる
――「排泄予知デバイス」というのは世界初の製品ですね。製品化するまでのエピソードは最近、上梓された著者『10分後にうんこが出ます 排泄予知デバイス開発物語』に書かれています。具体的には、どんな仕組みなのですか。
「まず、下腹部に超音波センサーを仕込んだウェアラブル端末をつけます。医療用テープで、お腹にずっと留めておけるくらいのサイズ、重さです。この機器で膀胱や大腸などに排泄物が溜まっている様子や動きを見ます。その情報をWi-Fiでスマートフォンに送り、専用アプリのアルゴリズムで解析して『何分後に出るか』を予測します。それをもとに『10分後』や『30分後』など、個々人の望む時間を設定して知らせるというものです」
――「排泄を予知」とは画期的ですが、どうして思いつかれたのですが。
「排泄が間に合わなくて恥ずかしい思いをする人をなくしたいというところから着想しました。排泄を遅らせることはできなくても、『10分後に排泄します』と予告されれば、余裕を持って準備ができるのではないか、と。介護される人は増え続けていますし、介護段階でなくても、病気や身体の不具合で便意や尿意を感じにくい人もいる。排泄行為は『人間の尊厳』の最後の砦です。そして、排泄予知で、病気や要介護状態にあっても、日々の生活がもっと明るく、劇的に快適なものになるのではないかと考えたのです。と言うと、いかにもきれいな話に聞こえますが、実は留学中に白昼の往来で「うんこを漏らした」という自身の体験が発端です。