私たちも「ICRP2007年勧告」をよく知っておく必要がある。邦訳版が出版されており(★注①)、図書館で閲覧が可能だ。「1990年勧告」に比べ、被曝対象者の分類などが詳細を極めていること、事故や核戦争を想定した緊急事態時の対応が記されていることなどから、読解が非常に難しくなっているので、本稿では放射線審議会の中間報告でまとめられている要点を2点だけ紹介しておく(★注②)。

「ICRP2007年勧告」のポイント

◆放射線防護の生物学的側面

・ 確定的影響(有害な組織反応)の誘発――吸収線量が100ミリグレイ(グレイはシーベルトとほぼ同じ)の線領域までは臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない。

・ 確率的影響の誘発(がんのリスク)――LNT(直線しきい値なし)モデルを維持

 100ミリシーベルト以上の被曝で確定的影響が出るということだ。確定的影響とは、脱毛、白血球の減少、白内障などの明らかな病変である。100ミリシーベルト以下だと特定の機能障害は見られないという。

 一方、放射線が遺伝子を損傷してがんを誘発する確率的影響は、閾値(しきいち)はないとするLNTモデルを想定している(★注③)。つまり、がんが発現するリスクは、放射線被曝のゼロから線量率に比例して直線的に上昇する考え方だ。すなわち、可能な限り被曝を避けるべき、ということである。

◆ 線源関連の線量拘束値と参考レベルの選択に影響を与える因子

・ 1ミリシーベルト以下――計画被ばく状況に適用され、被ばくした個人に直接的な利益はないが、社会にとって利益があるかもしれない状況(計画被ばく状況の公衆被ばく)

・ 1-20ミリシーベルト以下――個人が直接、利益を受ける状況に適用(計画被ばく状況の職業被ばく、異常に高い自然バックグラウンド放射線及び事故後の復旧段階の被ばくを含む)

・ 20-100ミリシーベルト以下――被ばく低減に係る対策が崩壊している状況に適用(緊急事態における被ばく低減のための対策)

 「計画被曝」とは、作業者のことである。したがって、この項目を公衆レベルで読むときは、太字にした「事故後の復旧段階」と「緊急事態」だけが適用される。福島県内の学校の許容量20ミリシーベルト/年とは、「ICRP2007年勧告」の「事故後の復旧段階」の上限、「緊急事態」の下限であることがわかる。

 しかし、緊急事態とは、チェルノブイリで1週間から1か月だったはずで、福島のように東電の工程表ベースで3か月から6か月のような長期緊急事態はだれも想定していないだろう。6か月で済むのかどうかさえ、まだわからないのである。