人を感動させることができる社員の重要性は不変

 チェスや将棋、囲碁の名人とコンピュータの対戦を見ていると、機械は、その場そのときで最善の選択をすることに長けているようだ。したがって、ロボットでも、そのときどきでスタンダードなサービスはできるだろう。つまり、ぎりぎり及第点の顧客満足(事前期待=事後評価)を果たすことは、AIやロボットでも可能かもしれない。

 しかし、たとえば一泊5万円の高級旅館をお客さまが選ぶのは、満足を超えた感動に対して一泊5万円にバリュー・フォー・マネー(支払った金額に対し、手に入れることのできる価値)を認めるからである。お客さまは、旅館の設備に感心することはあっても感動することはあまりない。

 旅館の細やかな心配り、サービスに対して感動を覚え、そこにバリュー・フォー・マネーを感じるから、お客さまは高額の料金を支払うのである。人の心を動かせるのは、同じ心を持つ人だけだ。機械に感動は起こせない。文字通り機械的サービスに終わってしまう。

 また、商品・サービスをコモディティー化させず、高付加価値を維持するためには、お客さまの期待に応え続けることが必須である。

 期待というものは、満足すればするほど膨らんでいく。事前期待が大きくなれば、事後評価のレベルも高めなければならない。

 ダントツのリピート率を誇る東京ディズニーリゾートが、常に新しいアトラクションの導入にチャレンジするのは、来場するたびに膨らみ続けるお客さまの期待に応えるためである。だからこそリピーターが生まれる。これが機械にできるだろうか。

 AIは“Assisting Intelligence(人の智慧を補助する)”技術として活用してこそ、社会に役立てることができる。将来、AI技術が進歩しても、社員品質が企業の格差を決定づける主たる要因であることには何ら変わりはない。