勝ち残る企業を創る鍵、「黄金のループ」の4番目のステップ「顧客・社会満足品質」について論じる。会社の永続的繁栄のためには、顧客満足、それを超えた顧客感動こそが絶対に欠かすことのできない条件である。さらに社会を満足させる、つまり企業の社会的責任について、見落とされがちな本業との関係において述べる。

企業は社会の幸福に貢献しなければ、生きている資格がない

 いかなる企業であっても、社会から必要とされることで、はじめて企業として成り立つ。企業は社会の発展に寄与することにより、はじめて存在意義(レーゾン・デートル)を獲得する。たとえば、医薬品業界の技術革新が、人類の健康、長寿に貢献していることは周知の事実である。また、車、鉄道、航空機などの移動手段の発達は、他の産業の発展に貢献し、社会全体を豊かにした。情報通信機器の発達も社会に多大な貢献をしている。

 正しい産業や、その構成要件としての企業は、その存在を社会から求められ、認められているのだ。

 したがって、正しい産業に属している企業は、高品質の商品・サービスを安定的に供給し、雇用を創造することで、社会貢献をしているともいえる。

 CSRとは、企業のステークホルダーに対する責任を果たすことでもある。ステークホルダーには社会も含まれる。社会に求められる商品・サービスを供給し、顧客感動を実現して、その結果としてもたらされる利益から適正な税金を納めることも、企業にとって最も基本的で、最も重要な社会貢献である。

 レイモンド・チャンドラーの『プレイバック』という作品中に「男は強くなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない」という名セリフがある。

 私流にもじっていえば「会社は儲からなければ生きて行けない。社会に貢献しなければ生きている資格がない」となる。日本には、ビタ一文税金を納めていない会社がおよそ70%あるという。こういう会社は国に対する義務や責任を果たしていない。

 社会貢献は本業を通じて行う、これが企業の社会貢献の基本である。寄付や慈善事業、ボランティア活動など本業以外の手段で社会に貢献することも、それはそれで立派な社会貢献である。しかし、本業をおろそかにして会社を危うい状況に追い込むことは、本末転倒であり、しょせん長続きできないことを経営者は銘記しておくべきである。ロータリークラブや青年会議所の活動に没頭した挙句、会社を倒産させてしまう経営者もいるのだ。

 本業による顧客満足の追求は、社会貢献に通じる本筋である。

 社会が期待し、満足する商品・サービス品質を創造することで、会社は社会に貢献することができる。社会に貢献する会社は、社会から評価され、感謝され、社会から積極的にその存在を求められる。すなわち長寿企業の道を歩むことになるのである。